第25章 信じてる
選手全員に配り終えた頃に御幸くんが戻ってきた。
「舞ちゃんたちのお守りのおかげかもな」
トーナメント表を見せてもらって思わず拍手した。
何事もなければ、負けない相手。
でも、全部コールドで勝てないと本戦は厳しいよな。
ゾノくんも同じ事を思っていたみたいで、彼の怒号が、グラウンドに響きわたった。
沢村くんも、グラウンドに帰ってきた。
外野ノックでガチ泣きしてたけど…。
マネージャーも新チーム初の公式戦に向けて忙しくなってきた。
「舞ーーー、ほんとベンチ入んないの?
スコア私が一人で書くの?!」
幸ちゃんが慌てている。
「大丈夫だよ。落ち着いて書けば。
御幸くんの事だから頭に入ってると思うけど、相手チームの打順と前の打席の結果、守備につくときに言ってあげて。
そうすれば、周りもみんな頭に入るからさ。」
「不安しかねぇ…」
「大丈夫だって。」
ベンチに入って書くスコアの重み…。緊張して当然だよね。
慣れれば問題ないんだけど。
最初はやっぱり緊張する。
「舞しか配球表つけられないんだもん、さっちん頑張れ!」
この公式戦から配球表とスピードガンの記録も一緒につけることになった。
プロにいった東先輩からの寄付だ。
私も頑張らなきゃと、気合いが入る。
例のごとく、ユニホームに背番号の縫い付け。
「今回もよろしく。」
「いつもより気合い入れて縫い付けます!」
2番の背番号をまた縫い付けさせてくれた。
キャプテンで4番、キャッチー。
背番号にもその重さが宿ってるみたい。
縫い上がったユニホームを見つめてエールを送った。
御幸くんの寮の部屋に行くと一年生が出てきた。
「あれ?御幸くんは?まだ夜間練習?」
「シーッ、御幸先輩居眠りしてるんで…僕も風呂行かなきゃいけないんで、適当に置いておいてあげてください。じゃ、急ぐんで!」
御幸くんが居眠り??
中を覗いてみると、自身の勉強机に突っ伏して居眠りしていた。
「お疲れだね…。」
イスにかかっていた御幸くんのジャージをソッと肩からかける。
野球ノート書いてたのかな?
腕の隙間から見えた文字。
御幸くんのなみなみならぬ選抜への想いが綴ってあった。