第25章 信じてる
「部屋、来てくれてたんだって?」
「気持ちよさそうに寝てたから、机の上に置かせてもらったよ。
メガネ、歪んでない?」
昨日の御幸くんはメガネをしたまま眠っていたから。
「それは平気だけど、起こしてくれても良かったのに。」
「疲れてるんでしょ?寝れるときにしっかり休まないと。
ブロック予選始まったら連戦で休む暇なんてなくなるんだから。」
御幸くんと教室で話しているとメールが来た。
相手は俊平。
「国土館と同じブロックなの嘆いてる」
「最近、真田とよくメールしてんじゃん」
「練習試合終わったころくらいからかな。
近況報告してくれるようになったの。
私達には強敵になっちゃったけど、俊平はあの轟親子に感謝してるんだって。サボり癖あったのも心入れ替えたみたいだよ。
監督の力って偉大だよね。うちの片岡監督もぜんぜん負けてない、いい監督だよね。」
正直、あのコーチの事はまだ信用できないと言うか…なんか胡散臭さを感じてしまう。
御幸くんはどう思ってるんだろう。
「夏練、冬の合宿は鬼だけどな」
「先輩達も泣いてたもんね、冬の合宿…。」
まだブロック予選も始まっていないのに、その先の冬合宿の事を思い出して、2人して震えた。
ボソボソと御幸くんがなにか言った。
「ん?なに?聞こえなかった…」
「なんでもねぇよ。大会中、またあいつのお守り貸してくんね?」
「兄貴の?もちろんいいけど、もう十分だよ?
兄貴の事、ちゃんと仲間だって認めてくれてるって十分伝わってるよ。」
「俺があいつと一緒に戦いたいんだ。
力、借りてるのは俺の方だから。」
新チーム指導の日。
全体練習が終わったあと、御幸くんは2年生を集めて兄貴のことを言った。
「ここにもう一人いるはずだったやつの事も忘れないで欲しい。」
そう言ってくれた。
それだけでもう十分だよ。
そう言ってくれた事が嬉しくて思わず泣いてしまった私を2年生全員で声をかけてくれた。
みんなの気持ちも伝わってる、感謝してもしきれない。
今のチーム状況はけしていいとは言えないけど、力を合わせることができたら、みんななら、必ず乗り越えられるって信じてる。