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ダイヤのA 御幸一也

第25章 信じてる


新学期がはじまっても、沢村くんはまだグラウンドを走ってる。
練習中にうるさいって思うほどの声が聞こえないのはちょっと寂しいな…。


御幸くんに近寄る倉持くん。
御幸くんはスコアブックを眺めていた。

「よぉ、キャプテン。どうすんだよ、これから。」

「なにが。」

倉持くんはあんなこと言ってるけど、沢村くんの事が心配なんだ。

「今は後輩のことを気遣うよりも、得点力の低い打線をどうにかするほうが先なんじゃねぇのか。」

「そりゃそうだけど…」

監督の言葉を出した時に、倉持くんが御幸くんの机を殴った。
隣にいた私も思わず肩が跳ね上がる。

俺にも原因がある。と御幸くんは言う。
コントロールの事、降谷くんのピッチングの事。

「あの日は投げる前から負けてたんだよ、気持ちがな。」

「そこまでわかってんなら、なんで…」

貴重な戦力。
沢村くんの事を御幸くんだってちゃんと考えてる。
考えた上で得点力の低い声打線の事を先だと言い放ったんだ。

イップスなんかで潰れてもらっちゃこっちが困る…。

その台詞を聞いて今まで黙っていたけど、思わず口を出してしまった。

「お前…」
「御幸くん…」


「「言ってること無茶苦茶…」」

「知ってる。」

倉持くんは息を吐いて、御幸くんの席から離れた。

「きついこと言わせちまったから、フォロー頼むな」そう、私に耳打ちしていった。

フォローと言われましても…

御幸くんに視線を送ってるけど、目…合わないんだよね…。

「御幸くん」

「なに?」

「今日、抽選?」

フォローと言われたけど、どうしていいかわからず、話題を変えた。

「そ。」

「これ、みんなで作ったから。持っていって?いいクジ引けますようにって特別念込めといた。」

こえーよ。と軽く笑う御幸くん。

「ありがと。
でも、夏も作ってくれたのに、秋もか。」

「夏よりレベルアップしたでしょ?」

夏とは少しデザインを変えてお守り。
御幸くんは目の前でプラプラ揺れているのを、さっきまでの険しい顔とは違い目元を緩めて眺めていた。


「これもらったら、やらねぇとなって気合い入る。マジでありがと。」

今回のは一つ一つに選手の名前が刺繍してある。
自信作だから、よろこんでもらえて嬉しかった。

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