第24章 御幸の気持ち ②
ダブルヘッダーの1試合目。
降谷沢村2人で投げぬいた。
結果は3-0。
結果だけ見れば、上出来なんだが点が思った以上に取れない。
沢村くんのマウンドでの様子が少し気になる。って休憩の時に舞チャンが俺に伝えにきた。
「なにがどうおかしいのか説明しろって言われたら難しいんだけど…御幸くんから見て沢村くんの球どうだった?」
「コントロールの甘さは元々だし、球自体は悪ねぇって思ったけど、そんなに変だったか?」
「そっか…なら気のせい…かな…。ごめんね…。」
この時の舞ちゃんの言葉をもっと真剣に考えていたらと後悔する事になるとは…。
それよりも気になるのはノリ。
ボールはきてるのに夏に感じた闘志とか気迫とかが全く感じられない。
ノリと舞ちゃんがまた2人でいるのを見かけた。
「今からキツイこと言ってもいい?
余計に追い詰めるかもしれないから先に謝っとく。」
「………。」
「野球って何人でするの?
攻めた結果の四死球なら、みんな納得する。誰も責めないよ。
でも今のノリくんは逃げてる。打者じゃない。野球から逃げてる。向き合う事に逃げてる。
野球やりたくてもやれない人って結構いるよ。
ねぇ、変わってよ。私だって野球やりたかった。
変わってよ。」
力の込められた拳がフルフルと震えていた。
「矢代…、俺…ごめん…。御幸から、お前がどんなに野球が好きでどんな思いで野球を諦めたか聞いてたのに、ごめん。」
「御幸くんはノリくんが投げる度になんて言ってる?ナイスボールって何度も言ってない?
御幸くんの事信じられない?バックの事は?
みんなはノリくんのこと信じてるよ。立ち直ってくれるって信じてる。」
ノリの目から一筋の涙が溢れていた。
「ほんと、情けなくて…俺にもっと力があれば…そう思った。
これって、みんな思ってる事だよな?」
そう、みんな思ってる。
俺だって…。
「キツイ事言ってごめんね。」
「いや、目覚めたよ。ありがとな…」
俺の役目だったのに、舞ちゃんにさせちまって、情ねえ…
食堂でもっと点取れって純さんに吠えられた。
先輩からのカツにみんな掻き立てられて、バットを振りに外に出た。