第22章 約束
降谷くんが走ってるのを見かけたし、寮は物静かだったし、みんな自主練やってると思う。
私も、できることをやろう。
室内練習場に行ってみると、御幸くん達は眺めてるだけだった。
レギュラーだった子は、みんなから休んでろって言われて、練習できないみたいで、ウズウズしてる。
マネージャーも来なくていいとつまみ出された。
「秘密の特訓なんだと。」
「野球なかったら何したらいいかわかんないね」
「だな…」
追い出された私達は御幸くんの部屋に行く。
初めて入る御幸くんの寮の部屋。
机の上には決勝戦の反省点かな?ノートが広げられててたくさん書き込んであった。
「こーら、恥ずかしいだろ。見んなよ」
「あ、ごめん…」
後ろからノートを閉じるために御幸くんと机の間に挟まれた。
ドキンと一瞬胸が高鳴る。
「そ、そう言えばさ…甲子園決まったらって言ってた話、アレってお預け?」
動揺したのを隠そうと、話題を振ってみる。
「それ、今聞いちゃう?」
あー、ダメだった…話題に問題があったかも…
いつもの意地悪な御幸くんになってしまった…。
「いや、あの…無理にとはいわないけど。」
「気になってた?」
「うん…まぁ…改まってなんだろうなぁとは思って…いたけ、ど…」
「ふーん、俺のこと考えてくれてたわけか。」
そればっかり考えたわけじゃないんだからね!
あんな言い方されたら、誰だって気になるでしょ?
「でも、まだ内緒。」
耳元で囁くように喋るから、ゾクッとした。
この距離感で、耳元で喋るのとか反則!無理!
冷静になりたくて、御幸くんの胸板をグイグイ押し返す。
「顔、真っ赤。かわいー」
かわいいとか言わないで。
恥ずかしいから。
火照った顔を見られたくなくて、両手でで覆い隠す。
「隠すなって、もったいない。みーせーて」
もったいないって何よ…。
「無理…ちょっと待って…ほんと、お願い。」
私の手首を取って、こじ開けようとしてくる御幸くんと、見せてなるものかと意地を張る私の攻防を遮ったのは、メールの着信音。
「あ、これ、私だ。」
メールボックスを開いてみると、俊平からだった。
「俊平、覚えててくれたんだ…」
「俊平?!」
ポソッとつぶやいたその言葉を御幸くんは聞き逃さなかった。