第22章 約束
「真田俊平。」
「真田って薬師のあの真田?」
「中学校一緒なんだ。」
「マジで?知らなかった…で、その真田がなんて?」
兄貴の命日は秋の大会の真っ只中だから、大会始まる前にお墓参り行っておきたいから、一緒に来てほしいって要件だった。
来年も一緒にって約束、覚えててくれたんだ。
「そうだな…もう2年か…早ぇな…」
去年の命日、御幸くんは一緒にお墓参りに行ってくれた。
御幸くんが兄貴の憧れの人なら、俊平は兄貴の親友といったところか。
気があったみたいで、学校の中ではずっと一緒にいた。
兄貴が亡くなった時、一緒に泣いてくれた。
高校は離れたけど、こうして時々メールくれたりする。
薬師の後も悔しいはずなのに、自分らの分まで頑張れよってメールをくれた。
兄貴はシニアリーグ、俊平はボーイズリーグってわかれていたけど、同じピッチャーとしてお互いを高め合っていた関係。
自然と私も仲良くなった。
「なるほどねぇ…そんな素振りなかったからマジで驚いた。
いつ行くの?」
「明日かな…向こうも練習休みみたいだし、練習始まったらタイミング合うかわかんないもんね。」
御幸くんがスッと立ち上がった。
「俺ともどっか一緒にいこ。ここにいてもつまんねぇし、ダラダラするくらいならさ。」
キャッチーミットとスパイクのメンテに行きたいと言う御幸くんに誘われた。
そうだ、ロジンバック残り少なかったんだ。
注文しとかなきゃいけない。スポーツ店に行くならついでに、と思い同行する。
御幸くんが私服に着替えている間に、他に注文しとかなきゃいけないものがないか倉庫に行って確認する。
「おまたせ、行こうかー」
「うん。」
「何そのメモ。」
「必要なもの達。スポーツ店に行くならって。」
「真面目かよ。デートしようよ。」
「デート?!」
びっくりして思わず聞き返してしまう。
「うそ、冗談。」
おいてくぞーと笑う御幸くんの表情が一瞬曇ったなんて、私は気づきもしなかった。