第22章 約束
「同じ夢をみてたんだから、選手とかマネージャーとか関係ねぇんだよ。
我慢しなくていい、ここには俺しかいないから。」
御幸くんのその言葉に、涙腺が決壊した。
立ってられなくなって座り込んだ私を、全身で包み込むように抱きしめてくれる。
「うん、それでいいよ。一人で泣くな。泣くところならここにあるから。」
涙が枯れるんじゃないかってくらい泣いた。
兄貴がいなくなった時と同じくらい。
悲しみの大きさは測れないけど、あの時と同じくらい悲しいし悔しい。
でも、今は御幸くんがいてくれる。
大きな手が心強くて暖かい。
「やらなきゃならねぇことはわかってる。前を向かなきゃ始まらねぇよな。また、力貸してくれるか?」
「何でもする!」
「ハハッ、これは心強い。頼むぞ、マネージャー」
涙を手で拭って、大きく頷いた。
「御幸くんて強いね。」
「強くねぇよ?強がりって方が正解かもな。
こうやって言葉にして誰かに聞いてもらわなきゃ、進めねぇんだからさ」
誰よりも早く前を向いて次のこと考えてる。やっぱ御幸くんはすごいよ…
「もう寮に帰らなきゃね。」
散々泣いたから、私も、前を向きたい。
前を向いて御幸くんの隣にいたい。
「どうせ寮に戻ったって寝れねぇんだし、いいんじゃね?明日からオフだし。もうちょい抱きしめさせて。」
「なんか恥ずかしくなってきたんだけど…」
「だめ。もうちょい…今、顔見られたくねぇから」
そう言う御幸くんは涙声だった。
御幸くんの言う通り、寮に帰っても寝られなくて、目を閉じれば逆転されたあのシーンが蘇る。
選手のみんなはもっとだろう。
なんて声を掛ければ正解なのか…全くわからないまま、寮に足を向けた。
試合を振り返るのはきついけど、先輩達の記録はしっかり残さないと。
投手陣4人は立派に投げぬいた。
それを配球表として記録に残すのが私の仕事。
それに、成宮鳴は同じ2年だし、避けては通れない相手。
甲子園でまた大きくなって帰ってくるだろうから、今からでも準備はしておきたい。
キャッチーが変わるからまた配球も変わってくるだろうけどね。
マネ室に保管してあったはずのDVDがない。
誰か見てるの?まさか、御幸くん?