第20章 あと2つ
準決勝2試合目の稲実の試合をスタンドで観戦する。
勝ったら持ってきてほしいと寮母さんに頼んでおいた物をみんなに配った。
昨日と全く一緒だけど。
「重そうだな…。運ぼうか?それ。」
「御幸くん、いいよ!御幸くんは試合したんだからゆっくり休んでてよ。」
「んじゃ、1年呼んでくるから待ってな。」
あっという間に行っちゃって、おめでとうも言えなかった。
みんなに配り終わって、一息ついていると、御幸くんが、あーんしてと言ってくる。
反射的に口を開けたら、いちごを放り込まれた。
「舞ちゃんにもおすそ分け。
あの甘酒プリンも美味かったし、みんな食ってたよ。雰囲気変わったし。だから、6回に得点できたのかもな。」
「まさか!みんなが繋いだからです。」
御幸くんと笑いあっていると、亮介先輩がごちそうさま。って言って横を通り抜けていく。
歩き方、ちょっと変?
「どうかしたか?」
「あ、ううん。なんでもない。試合始まるよ!」
「配給表頼むな。」
「任された!成宮くんを丸裸にしてやるんだから。」
「あははっ。まじで鳴、相手だと性格変わるのな」
お腹を抱えてクツクツと喉の奥で笑う御幸くん。
「なんでだろうね。絶対仲良くなれない気がする。」
ハァ…とため息をつくと、ツボにハマったのか御幸くんはまだ笑ってる。
結果はやはり稲実。
スタンドとグラウンド、火花が散って見えた。
トイレに行った1年生トリオと引率者?の御幸くんが遅いから呼んできてと言われて球場内へ入る。
前から成宮鳴が歩いてきた。
「あ"ーー、一也の女!」
「だから!違うって!何度も言わせないでよ!」
顔を合わせた瞬間にこうだもんな…。
何度も言うけど、人のこと指差すなー。
「お前の兄貴のせいで、一也は青道に行ったんだからな!一緒にやろうって誘ったのにさ。潰す相手は大きい方がいいとかなんとか。それに約束した相手が青道で待ってるからって。
だから、お前、なんか嫌い。」
「私もあなたのこと好きじゃない。」
またあっかんべーってされた。
ホント腹立つ人だな…。
兄貴の話、わざわざ持ち出さなくてもいいじゃないか…。