第2章 一年生 ② 修正済
「ねぇ、私…何かした?」
こっちを向いてくれないユニホームの裾をクイッと引っ張った。
「舞ちゃんは何もしてねぇだろ?
そんな感じ悪かった?」
「喧嘩でもしたのかってみんな聞いてくる」
「そっかぁ…
喧嘩はしてない、よな。
ちょっと考え事。
甲子園しか見ない。やれる事を精一杯やるだけ。
周り見えなくなってたな、ごめん。気をつける」
いつもみたいにニカって笑って、飯食ってくると御幸くんはその場を離れた。
避けられてるって思ってたのは、勘違い?
違うよね。
今も目、合わせてくれなかった…。
「マネージャーどうしたの?御幸にいじめられた?」
「小湊先輩…や、なんでもないです。」
先輩たちが落ち込んでるのを察知してよってきてくれた。
「あ"、御幸がマネージャーいじめてんのか?
あいつ、調子乗りやがって!」
「伊佐敷先輩!違う!違いますから!」
これ以上大事になると、余計にややこしくなるような気がして、違う違うと言い続けた。
「これやるから、元気だせ」
どこから出してきたのか、増子先輩がプリンを差し出してくれた。
倉持くんの話によると、増子先輩はプリン大好きなのに。
躊躇していると小湊先輩が貰っときなと微笑んでた。
グラウンドから私を呼ぶ声がする。
先輩が探していたみたいだ。
泣きそうになったのをグッと堪えて、はーいと返事をした。
「じゃ、私行きますね。心配かけてごめんなさい。」
マネージャーの仕事を淡々とこなす。
「あれ、御幸はこっちじゃねぇの?」
「みんな、御幸くん探す時なんで一番最初に私の所来るかな…
最近は全然こっち来ないけど…」
「どーしても一緒にいるイメージついてるし。
秋大が近いから、集中してんだろ。
器用そうに見えて、不器用なやつだし、野球以外は残念なやつだけど、矢代は見放さないでやって」
コクンと頷いたけど、むしろ見放されたのは私の方なのでは…
教室でも、挨拶しかしないし。
必要最低限の話しかしてないし。
なんだか寂しいな。
選抜をかけた秋季大会。
遠いな…甲子園は。
毎日毎日、どれだけ自分を追い込んでも、
まだ届かないのか…
みんなが努力してるのは、私達マネージャーが一番良くわかってる
長いオフ…
その間にどれだけ自分たちを鍛え上げられるかが夏の大会の結果に繋がる