第5章 Tell me cute
「お前ほんとブスだな」
それは「今日のごはん何かなあ」とでも言うのと同じくらい淡々と告げられた。
私は小さいころからずっと言われてきたこの言葉にいまさら莫大なショックを受けるなんて思っていなくて上手く返せなかった。
おそるおそる横を見てみると、この言葉を発したかっちゃんは眠そうに大きなあくびをしていた。
私とかっちゃんが友人という関係になったのはつい最近のことだ。
中学までの険悪な関係を終え高校生活半分を終えた今となっては、昔のようにとはいかなくても、こうして談話室のソファーで隣に座り話す程度にまで関係は修復した。
「ブス、」
何を隠そう私は1度もかっちゃんから可愛いと言われたことがない。
かっちゃんが私を形容する言葉なんてブスか尻軽女。
決して女の子に向かって言うことじゃないものばかりだ。
たしかに私の容姿はお世辞にも可愛いとは言えず、低い身長にやわらかくも細くもない四肢、胸部はあまり肉付きもよくない。
髪は天パで纏まりにくく、性格も小心者でだし、正直自分に女の子らしいところなんて皆無なのだ。
可愛いから程遠いことを再度理解するとまたため息がでてきた。
涙まででてきそうになってあわてて頭を振った。
今まで幾度となく言われてきた「ブス」に「可愛い」と言ってもらいたいと思った。
胸がちくりと痛んだことはあったがこんなことは初めてだ。
ずっと片思いしてた相手と仲良くなれたからって欲張りになっていってる自分に乾いた笑いしかこぼれない。
そしてさらに欲を言うと「好き」になってもらいたい。
まあそんな都合の良い人ではないとわかっているつもりだが、私が可愛くなったら可愛いって、好きって言ってくれるのかな。
そうだ、きっとそうに違いない。
その結論に至るやいなや私は絶対に可愛いくなると決意した。