第3章 merry you〜after〜
「凛、テメェやめろや」
「なにが?」
「っ俺の前でアイツの名前呼ぶんじゃねえ!!」
啓悟さんと、啓悟さんが、啓悟さんに。と結婚する以前から薄々気付いてはいたが、凛のホークスに対する信頼は驚くほど厚い。
別に俺は凛の交流関係にとやかく言うつもりは決してない。
決してないが、あまりにも距離が近すぎるし、凛が話すことといえばホークスのことが多すぎる。
凛は何かあれば俺ではなくホークスを頼るのだ。
この間だって仕事で傷を負った凛は俺より先にホークスに連絡を入れたらしい。
なんでだ。テメェの旦那は俺だろう。ホークスから妻の怪我の状況を聞く旦那の気持ちを考えろクソが!
「どうして?」
こてんと俺に覆いかぶされながら首を傾げる凛。クソ可愛いなおい…。
「テメェの旦那は俺だろうが」
「…うん」
そう言って銀色の指輪の光る凛の左手に指を絡めると、凛は指輪に視線を移し頬を赤く染めた。
最近、こうしてベットの上で事に及ぶ前、少し触れ合うようになった。
今まではベットに着くや否や直ぐに事に及び甘い雰囲気なんて微塵もなかった。
だが意外にも凛は、こういう肌を触れ合うだけの行為が好みらしく、何ならセックスせずに抱きしめ合い眠る日も多い。
俺は毎回でも事に及びたいが、凛が嬉しそうに目を細めて笑うため、仕方がなくだが付き合ってやっている。
「けどね、かっちゃん」
「あ?」
照れる凛の頬にキスを落とし、次に唇にキスしてやろうとしたとき凛は言った。
「無意識、なんだと思う。私が啓悟さんの名前呼ぶのって。ほら、一緒に居る時間が長かったから、ね?」
だから仕方がないの。と凛はあっけらかんと言った。
久しぶりに、堪忍袋の緒が切れる音がした。