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【ヒロアカ】Rouge【爆豪勝己】

第2章 merry you





初めて出会った日から二十年、一緒にいた時間は家族を除けば誰より長いのに、付き合っているのに、こんな風に穏やかな気持ちで触れ合うのは初めてだった。

俺が凛を抱きしめるのはそれこそセックスの時くらいで、こんな風にしおらしく俺に身を任せるのもセックスの時だけ。

本当に、これじゃセフレだと言われても反論のしようがない。

凛が俺にぶつけてくれていた「好き」の気持ちだけが繋いでいた、脆い関係だったのだ。


「愛してる」


以前の自分だったら虫唾が走ると決して口にしなかっただろう言葉。

虫唾が走るどころか、凛をの瞳に涙の膜が張るのを見てもっと言いたくなった。

もう不安なんて微塵も感じさせないくらい、耳元で囁いて抱きしめたい。

今まで無駄なプライドのせいで無為に消費してきた時間が惜しくて仕方がない。

ぐず、ととうとう凛をが泣き出したのを湿る胸元で感じながら、俺はもう何度目か数えるのも煩わしいプロポーズを繰り返した。


「俺と結婚しろ」
「…嫌だって言ったら?」
「テメェが頷くまで言う。何度でも」
「ふふ、タフネスだね」


鼻を啜りながら凛が小さく笑う。

腕の中で背伸びをした凛が、そっと小さな唇を頬に押し当ててきた。

ちゅ、と可愛らしい音がする。

おい、そこは口だろうがふざけんな。


「うん、いいよ」


柔らかな声音が聞こえた瞬間、耐え難い衝動が沸き上がる。

意味を為さない声が出そうになって、懸命に堪えながら俺は凛を抱きしめる腕に力を込めた。

視界が滲む。

泣きそうになっている俺に、凛をが微笑む。

困ったように眉を寄せて笑う顔は、幼いころから見ていたものだ。

かわいい、と素直に口に出せば一瞬にして頬が真っ赤に染まった。

拗ねたように凛をが俺の胸に顔を押し付ける。


「…傷ついてないと思わないでね」


小さな声に、その言葉が、許しであることは痛いほどわかった。


「ああ…悪かったっ」


屈みこみ、小さなその体に覆いかぶさるようにしてきつく、強く抱きしめる。

凛をが痛いよ、と抗議の声を上げるまで、ずっとそのままでいた。


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