第1章 理想のペアとさつきたち
イチョウやモミジの紅葉の季節、Uー17合宿所(アンダーセブンティーンがっしゅくじょ)の6番コートで球の打ち合う音が日暮れの時間に響いていました。
夕食後の時間、丸井が木手を練習に誘い、理想のペアはラリーが続いています。ラリーが100回近くになったところで木手が休憩を申し、1番星を見上げながら、2人は水分補給をしていました。
「今日も練習に付き合ってくれてサンキュー、キテレツ」
丸井がお礼を言ったとき、木手はまだ水分補給していましたが、ふっと丸井に微笑します。
「うちの部員もあなたみたいにアクティブなら良いのですがねぇ」
と、木手が言ったことで、甲斐や平古場、知念や田仁志のくしゃみが聞こえてきた気がした丸井でした。
「今頃、お前の仲間、くしゃみでもしてるんじゃないか」
「ふん」
理想のペアが談笑していたところ、風が突然吹きます。背筋の凍るような風に2人はぶるっとなり、合宿所の宿舎部屋に戻ろうとしていました。
そのとき、小学校高学年の女子2人と男子1人、そして黒ネコ1匹の姿が見え、理想のペアは声を掛けます。
「おーい」
「あなたたち、こんな時間にどうしたのですか?」
「まさか、迷ったとか?」