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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第2章 破 ―信長の手習い―


越後に落ち着くなり半日もせず、信長からの贈り物が届いた。
その事に謙信は少なからず不機嫌な顔をしたが、取り敢えず我慢をしている。

のどかに甘い時間を過ごした後、湯浴みでもして旅の汗を流そうとしていたところだった。
どうせ密偵にでも追わせて機を伺ったのだろう。
佐助が「使者様から言づかりました。信長様からさんへとのことです」と言ったのが証拠だ。
佐助が追跡に気付かない訳が無い。
敵ではないのを確認した上で好きにさせていたのだろう。

「……信長様も手配が素早いですね」
光成からの言伝を頼まれた佐助も同席して感想を漏らす。
佐助としてもあまりに見計らうタイミングに感心したのだ。
さすが、信長は情報網が広い。
一時的に仲間となり、顔を見知った織田の密偵に旅程を大まかに教えはしたが、こうも正確に見計られるとは思わなかったのだ。
「信長様は即決即断で、しかも思い付きなだから。あまり深い意味はないんじゃないかな」
は微笑んで言いながら、大きな桐箱を開ける。
ふわりと良い香りがし、薄い和紙で中蓋をしてある。

「あれ……?佐助君、これ、本当に私に?」
一番に中を見たが顔を上げて確認する。
「そう聞いてるけど」
「でも、謙信様に文が入ってる」
が取り出した書簡を佐助と謙信に見せた。
中蓋の上に添えられた文は豪快ながらも華のある、信長らしい筆跡で『上杉謙信殿』と書いてあった。
「俺に?何故信長が俺に文など寄越す」
顔をしかめて受け取り、宛名を確かめてから雑な手つきで文を広げる。
その謙信をと佐助は黙って見つめる。

謙信は読み始めから顔をしかめていたが、読み進めるうちにどんどん不機嫌さが増している。

「……」
久しぶりに見る険しい表情にも緊張する。
「はい?」
「お前、本当に信長との間に何もなかったのだな?世話になったというのは理解しているが、本当にそれだけだな?」
鋭い目で見つめられ、は驚いた。
「ありませんよ!何を書いてあるか知りませんが、信長様はわざと相手を揶揄う言い回しをする方なんですっ!」
首を振って否定するに謙信は一応安堵するも、やはり信長の言い草が気に入らないようだ。
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