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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第1章 序


洋裁を中心に勉強していたが、基本だけは和裁の勉強もしてきた。
デッサンをしっかり描く為に練習するうちに絵も好きになった。
そのうち反物の模様をデザイン出来ればきっと楽しいだろう。
佐助も積み重ねてきた知識をこの時代で役立てているのを考えると、ここで出来る事もたくさんあると思えた。

「その水墨画が気に入ったのか?お前が気に入るような絵ではないと思ったが」
「絵柄の評価を出来るほどに詳しくないですが、筆の置き方が繊細で見惚れます。ただ、この水墨画というより、私も絵を描いたり着物を仕立てたり、五百年後でなくても好きな事が出来るなと思ったんです。好きな人の傍で好きな事が続けらるなんて、贅沢ですね」
いかにも楽し気に機嫌よく笑うに謙信も微笑んだまま、近くに来いと手を差し伸べる。
「おいで」
「はい」
謙信の手に自分の手を重ねると、謙信が引き寄せて膝に抱く。
まさか膝に乗せられるとは思わず、立ち上がろうとするが謙信の腕に閉じ込められてしまった。
「そう逃げようとする必要は無いだろう」
温かい胸にくっつきながら、それでも落ち着かない。
「逃げるだなんて……隣に行くつもりが、突然膝に乗せられて驚いたんですっ」
「身体ごと触れたくなったのだ」
肩口に顔を埋めて言う謙信の声にくすぐったくなる。
「それは……嬉しいのですが、あまり驚かせないでください。突然こんなことをされると恥ずかしくなってしまいます」
「俺は我儘で待てない男だと分かっているだろう?それに、驚かせるつもりはないが恥じらうお前も愛らしい。ずっとこの腕の中にいるのだと思うと幸福に溺れて死にそうだ」
切ない程に甘い睦言にも身体の力が抜けてゆく。
「……私は謙信様の率直過ぎる言葉に馴れなければいけませんね」
「なぜだ?」
「嬉しいのと恥ずかしいので、心臓がいくつあっても足りないくらいにおかしくなりそうです」
甘い悩みを口にするに謙信も笑みを深める。
「このくらいで音を上げられては困る。これから先、ずっと、もっと、いくらでも言いたいのだからな」
二人は一度微笑み合い、もう一度強く抱きしめ合った。

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