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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第1章 序


「もうお城に着いたんですか?」
「ああ。城門を抜けた。ここはもう城内だ」
先に馬から降りての腕を自分の首に回させて抱き下ろす。
「あんまり馬が早くて驚きました」
「これでもお前に負担を掛けぬよう抑えた方だ。城下町は山中よりも人が多いからな」
穏やかに話す謙信の様子に出迎えた家臣達も驚愕していた。

自分の馬に女を乗せ、しかも笑いかけながら自ら降ろしてやり、穏やかに話しかける。
それだけで充分に驚愕なのだ。

「御屋形様、ご無事ですか?!」
一人進み出た家臣が恐る恐る尋ねる。
普段と違った帰還なのだから、案じるのも仕方がない。
「見ての通りだ。それより文の通りにしたか?」
「はい」
「ご苦労。、ついてこい。足元に気を付けろ」
馬から降ろした時のまま手を掴んでいた謙信が再び歩き出す。
しかし歩調は緩やかでの歩調に合わせていた。
自分と歩く時に歩調を落とすのが当たり前になっている謙信にも思わず笑みがこぼれる。

「どうした?」
の笑う気配に謙信が問いかけた。
「謙信様は、出会った時から一緒に歩く時、ゆっくり歩いてくれているなと」
「俺に合わせさせたらお前が転んでしまうだろう」
当然のように言う謙信にも「そうですね」と微笑み、もう片方の手も添えた。
「俺も、お前がこんな風に愛らしく触れてくれるのが嬉しいぞ」
率直に言う謙信に一瞬戸惑うが、は照れながらも「私もです」と答えた。

ずらりと出迎えに頭を下げている城内の家臣や下女に軽く挨拶を済ませ、謙信は自分の部屋までを連れて行った。
「先に文を出しておいたからすぐに休めるだろう。俺の部屋にお前の物もおけるよう、設(しつら)えを変えるように言い置いた」
「そうだったんですか?」
「ああ。戻るまでの時間はあったからな。こちらへ戻った頃にはお前もくたびれているだろうと思い準備をさせておいた。多少使い勝手に不便があればお前が好きなように変えればいい。俺は戦がなければないで軍議や内政の会議やら視察やらであまり部屋を使わないからな。お前の好きにして構わん」
「それでしたら、一つお部屋をいただければ私は自分の物の管理くらい自分でしますよ?謙信様も留守が多いとはいえ、ご自分のお部屋は落ち着く方がいいのでは?」



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