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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


「その鳴き声を聞きながら、お前の身体をあます所なく触れ、繋ぐ場所を味わっていたい」
一瞬困った顔をしただが、顔を両手で覆ってから頷いた。
「……全部くっついていたら、おかしくなってしまいそうです」
恥ずかしそうに言うが、その言葉で余計に煽られる。
二人は存分に体温を分け合い、口づけを数知れぬほどに交わし、求める衝動のままに身体を重ねた。

が目を覚ますと茜色が広がる。
夕刻だった。
謙信が明り取りの窓を開けて風を入れ、気だるげに外へ身体を向けていた。
には謙信の羽織が掛けられているが、謙信はが起きた事に気付いていないようだ。
薄着のままに夕風に揺れる月光色の髪はやはり綺麗だ。
夕陽を受けて金色に染まっているのも幻想的に見える。
「……酷いですね」
声を掛けるとすぐに振り返る。
穏やかな優しい微笑があった。
「何がだ?約束通りに優しく愛しただろう?」
傍へ戻ってきて隣に寝転がる。
「起きた時に一人にするなんて酷いです」
笑って言うと、謙信も笑みを深める。
「確かにそうだな。傍にいるべきだった」
抱き寄せて囁く。
「窓の外に興味深い物がありましたか?」
「いや。風を入れようとしたが、何となくこの部屋から庭を見るのは久しぶりだったからな。新鮮に思っていただけだ」
「窓から見える場所に何か植えても良いですか?」
「ああ。好きにしろ。ただ、棘のある植物は駄目だ」
気怠い中にも甘い微笑を浮かべて、謙信の手がの頬に触れた。
「よく知ってはいませんが、武家流では棘のある植物を好んで活けると聞いていますが、違いますか?」
「花を活ける作法のことを言っているのなら間違っていないが、お前の指が怪我するのは俺が許さん。それだけだ。武家流は棘も験担ぎに扱うが、そんな物がなくとも俺には関係ない。どうせ担ぐならお前が験を担いだ方が安心だ」
触れるだけの口づけをし、謙信はを腕の中に抱きしめる。
抱き締めながらも、抱き締められている様な安堵感があり、幸福な気持ちでの背を撫でる。
鴉の声が空から聞こえ、茜色が菫色に変わってゆく。
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