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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


謙信は言葉通りに、命を賭してでも守ってくれる事を何度も証明し、共に生きたいと言う通りに傍にいる時間を無理にでも作り、二人の時間を大切に過ごしてくれている。
最初は「行き過ぎだ」「曲解だ」とも思ったが、それが謙信の気持ちの強さであり、愛情表現なのだと理解している。
行き過ぎる独占欲も過剰な溺愛も、それが謙信の愛し方なのだと知れば恐れや不安はなくなり、嬉しく、愛おしくなった。
その気持ちはずっと変わっていないのだ。

は不意に恥ずかしいという気持ちが薄れてゆくのを自分でも感じた。
「謙信様」
あえて謙信を求める愛しい気持ちで呼ぶと、謙信にもその声の変化が伝わり、額をくっつけてくる。
額や頬にかかる謙信の髪の感触すら愛おしいと思う。
「佐助君は私にとって頼りになる先輩のような存在です。知らない事を教えてくれて、困った時に助けてくれます。けれどそれは元にいた世界と今いるこの世界の違いについてです。ですから、これから先の新しい事は、謙信様が教えて、助けて下さい。私も出来る事があればして差し上げたいと思っています」
謙信は最初から率直だった。
我慢が嫌いで思うままに振る舞う。
傲慢だが、それを裏付ける誠実な責任感があるのだ
そうならば、自分も率直に、思うままに気持ちを伝えようと微笑む。
緩んだ手から両腕を抜き取り、謙信の頬を両手で包む。
心なし、謙信の瞳が普段より濡れて見える。
獣性の焔は消えていないが、意地の悪い余裕のある笑みは無くなっていた。
「まだまだ以前の世界と今の世界の常識非常識が分からないので不用意な事をしてしまうかもしれませんが、私は謙信様がいれば、どんな世界だって良いと思うくらいにあなたに焦がれてしまっていますよ」
恥ずかしさよりも言葉選びの難しさに思わず苦笑いしてしまったが、謙信は一瞬目を眇めて強く抱きしめ、の肩口に顔を埋めた。
「……これ以上、俺を骨抜きにするな。俺の部屋に鍵をかけて閉じ込めたくなる」
「今なら、それも楽しめるくらいに謙信様に夢中ですから」
自分の肩口で熱い呼吸をする謙信の髪を撫でる。
自分なりに愛情をこめて髪をなで、謙信の頭に口づけた。
「出来る事なら、私があなたを閉じ込めてみたいものですね」
思いついて言うと、謙信が顔を上げ、驚いた表情で見つめていた。
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