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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


これ以上謙信の過剰な嫉妬を刺激しないよう、言葉を選びながら言ってみるが、謙信は小さく笑う。
「必要ないだろう?手だけでなく身体も繋げるのだからな」
「こ、ここで、ですか?!」
「待てるわけがない。お前の甘い香りに酩酊しそうだ。酒はいくら飲んでも酔わないが、お前の甘い身体の香りにあてられるとすぐ酔い潰されそうになる。悪い遊びをするお前を許してやる代わりに、俺は優しく愛してやろう」
謙信はの手を掴んだまま、簡単に身体を起こして机を跨ぐ。
一瞬腕を引っ張られたが体勢を崩すが、謙信が抱きすくめて受け止めた。
「お前は壊れてしまいそうに儚いが、こうして抱き締めると柔らかくて温かい。佐助と言えど他の男の手を握ってあんな声を出し、こうも愛らしい顔を見せたのは許せぬが、その分俺の物だと安心させてくれるのだろう?」
組み敷かれ、ぴたりと重なる身体が着物越しにも熱いのが分かる。
謙信は滑らかな象牙色の肌の見た目に反して、昂ると酷く身体を熱くしての体温をも上げてしまう。
見つめる瞳は危うく獰猛だが、切なさも滲んでいる。
欲情を隠そうともせず、切実に求めている顔だ。
恋仲になってからずっと、謙信は悪ふざけをしない限りは、いつもゆっくりと大切に抱いてくれている。
焦らされているのかと思う程に繊細な手つきで触れ、蕩けるような甘い声で愛を囁く。
けれどふとした拍子にタガが外れると酷く意地の悪い事を言って羞恥心を煽り、力任せに息苦しい熱を押し付けてきたりする。
そんな時は謙信が気持ちを不安にしている証拠で、執拗に繋がりたがり、を休ませてもくれない。
けれど、そうなるきっかけがちゃんとあり、後になって思い当たるのだ。
謙信を不安にさせない限り、謙信は機嫌良く穏やかに微笑んでくれている。
大らかにを見つめ、口数は多くないが、質問すれば答えてくれるし、の話を心地よさそうに頷きながら聞いてくれる。
謙信が極端な行動を取るのも、過剰に束縛するのも、失う事の恐れが根本にある事を思い出す。
そんな不安など感じさせないと決めていたのに、思わぬ事で謙信の理性を揺さぶってしまった。
守ってくれる謙信を自分も守ると決めていたのに、些細な気の緩みで謙信の気持ちを軽んじてしまう事が今でもたまにある。
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