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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


「あっ……!」
「……その啼き声と、先程の声を聴き比べてやらねば気が済まん」
ひそめた声は凄味と色気に満ち、はゾクリと身体を震わせた。
「だ、だから、佐助君とは本当に腕相撲をしていただけで、…‥んっ!……さ、佐助君は手加減をして、くれるから……」
甘い声で他の男の名前を呼ぶの唇に謙信は軽く歯を立てる。
「甘ったるい声で呼ぶのは俺の名だけにしろ。佐助が加減をしてくれるから良いのか?」
色香を強めた目で見つめられ、は返事に困る。
左右色が違う瞳はどちらも熱を帯び、声も低く甘い。
それなのに恐ろしく威圧感のある静かな声が謙信の端正な顔立ちを更に艶めかせる。
「……良いと、言うか、根気よく相手をしてくれて有難いと……っ」
再び甘噛みされ、今度は深く口づけられる。
呼吸をする間もなく、口の中を激しく舐め回さられ、「応えろ」と言うように舌を謙信の熱い舌先でつつかれ、催促される。
朦朧と小さな舌を動かそうと口を開けると、その僅かな隙に更に唇を強く押し付けられる。
まるで食べられているような口づけである。
「……確かに俺は加減をしてやる気は無いが。だが、優しい佐助が良いとは大胆な発言だ」
意地の悪い言い回しと激しい口づけに責められては
の頭は何も考えられなくなる。
しかも両手を強く握られて身体が動かせない。
「……そんな事、言ってません!んっ……謙信、様が良いに決まって……」
言い終わる前に強く舌を吸われて言葉が途切れる。
「……そう煽るな。安心しろ、お前を傷つける訳が無いだろう?」
「……え?」
急に穏やかな優しい声音になった謙信を見上げるが、表情は獣の獰猛さで飢えを見せている。
声と表情がちぐはぐだ。
「指一本から優しく愛してやる。いきなり押したりもしない。先程はすまなかったな」
労わる声で謝罪の言葉を述べているはずが、脅迫めいて聞こえてならない。
「……あの」
「なんだ?」
「……指一本で、精一杯、ですので」
自分でもどう続ければ良いか分からなくなり、視線をさまよわせる。
試しに掴まれている腕を引いてみるがびくともしない。
「何故逃げようとする?俺を好いてくれているのだろう?」
「……好きです」
「なぜ泣きそうな顔で言う?」
「好きですから、手を離してもらえませんか?」
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