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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


好戦的な目で見つめられ、思わず怯む。
佐助に高校古文の授業さながらに漢文を書き下してもらったお礼をまだ言っていないし、天文学の話を聞きたかったのだ。
「そ、そういうわけじゃ……っ!」
「ほら、力が緩んでいるぞ。しっかり勝負に挑め」
「……ごめんね、さん。またゆっくり。俺はまだこの世界で探求したい事があるから、道半ばで上司に殺されたくないんだ」
神妙に言ってすっと立ち上がる佐助に謙信が手を振る。
「行け」
「では失礼いたします」
音も無く障子を閉めて去ってしまうつれない友人には裏切られた気分になる。
「謙信様っ……、私は、勝てません!負け……ですから!」
「当然だ」
あっさりとの力を押し返し、今度は痛くないように机に手の甲を触れさせる。
はくたりと力が抜け、机に上半身を突っ伏させた。
「最初から、勝てるなんてっ……、思ってないのにっ……、どうしたんですか……?」
精一杯力を振り絞っていたせいですっかり脱力してしまい、呼吸も乱れたままに謙信を見上げる。
うつ伏せ、髪が乱れたままに見上げられると謙信も堪らない。
「……お前、まだ分かっていないのか?」
呆れながらも嫉妬の焔が再燃する。
「え?」
謙信は空いている右手での頬に掛かった髪をはらってやり、首筋を露わにする。
清らかな甘い香りが立ち上がる。
は空気にさらされた首が涼しいとでもいうように呑気に気持ちよさそうな顔になった。
誤解が解け、謙信の機嫌が直ったのだと勘違いしたのだ。
「無謀な上に無防備だ」
謙信はの手を握ったまま身を乗り出し、首筋に口づける。
「ひゃっ……!」
心底予想外だったのか、可愛らしく声を上げて身を引こうとするが、謙信の左手に両手をしっかりと握られていて逃げられない。
「……まるで閨での声と同じだ。呼吸を乱し、髪が乱れる様な事を他の男とするとはどういうつもりだ?俺の物だという自覚が足りんな」
唇を首筋から顎、頬に滑らせ、耳へじかに囁く。
その熱い吐息の様な囁きにはようやく謙信の行動を理解し、先程よりも赤くなった。
そんな風に思われては佐助と腕相撲をする時に変に意識してしまう。
「誤解です!」
「それは分かった。だが許せん」
耳朶を甘噛みし、唇を舐める。
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