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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


今度はの様子を見てやろうと謙信は少し力を緩めてやる。
僅かにの押す方へ傾かせてやるが、目をぎゅっと閉じて息を詰める様はどうしても煽られる。
「どうした?本当に全力か?」
揶揄う声には必死で力を込める。
「んっ……!も……少し……っ!」
思わず愉悦の笑みを浮かべる謙信に佐助は呆れる。
ただの腕相撲をこうも色事に結び付けられるのは倒錯的でしかない。
悦に入った謙信に対して、は必死に挑んでいる。
「この程度では俺は少しも満足できないが?」
意地の悪い声に艶っぽい熱が帯びていることには気付かないまま、頬を紅潮させている。
肩で息をし、謙信の指を押し直すたびに髪が乱れるのが酷く悩ましく、淫靡なことをさせている気分に浸れる。
「でもっ……!わたしも……これでもっ……!」
「ほう?なかなか頑張るな。さすがの俺も指一本では参りそうなのだが、指を二本にしては駄目か?」
勿論指一本でもの腕力など押し切れる。
しかし戯れに言葉遊びをし、両目をぎゅっと瞑って指を握りしめてくるを揶揄うのは酷く心地が良い。
「むっ!無理ですっ!!これでも……駄目なのにっ……!!」
必死に言うに謙信は低く笑う。
「……謙信様、先程俺は少しだけ腕を傾けてさんが力を入れやすい状態で始めたんです。だから力加減が出来ていたんですよ。すぐに勝ってしまっては大人げないでしょう」
「ふん、加減をする勝負などつまらんだろう」
水を差す佐助に素っ気なく言う。
「子供は遊びに負け続けると飽きてしまうでしょう?たまにはわざと負けて勝たせてあげたり、少し加減をして良い勝負にしてあげてください。……相手も楽しませてあげないと、友達がいなくなりますよ」
言外に窘める佐助に謙信は鋭く睨む。
「お前、こんな戯れを俺に黙ってしていたのか?」
「たまにですよ。最初に言ったじゃないですか。乱世で生きるのには体力が要るという話が発端だと」
「分かった。今回は大目に見てやるからお前は行け」
さっさと追い出したい謙信が言うが、は顔を赤くしたまま佐助を見上げる。
「えっ!?でも、まだ話したい事が……!」
「、お前は俺がいるというのに佐助を優先するのか?俺が相手では不足か?」。
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