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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


姿勢を直しながら文句を言うはやや髪が乱れ、白い頬に掛かる乱れ髪が閨を思わせる。
手の甲をぶつけてしまったのは予想外だったが、やはりこんな顔をやすやすと見せるのは許しがたい。
不満をかかえたまま佐助へ視線を移す。
「それで、佐助。これをどう調整するというのだ?どうしたって一瞬で勝負が決まる。それなのに先程は勝負がついていなかったぞ?お前であれば相手に負ける訳が無いだろう?」
「さん」
佐助に言われ、は謙信を見上げる。
悔しそうな、困ったような、酷く愛らしい目を向けられると謙信はこの遊びに面白味を見つけてしまう。
「……謙信様、指を一本でお願いします」
弱気に言うに謙信は得心(とくしん)」した。
「……ほう。お前は両手で握りしめるというのに俺には指一本で挑めとは随分と強欲だな。そこまで「調整」は必要か?」
やや艶めいた声になるが、は気付く余裕が無いようである。
「だって、佐助君はもっと加減をしてくれるのに謙信様はいきなり力任せにするんだもの」
佐助は一瞬目を逸らしたが、謙信が不敵な光を目に宿した事に危機感を覚えた。
聞きようによっては色めいて聞こえる。
「……謙信様、これは子供が戯れにするものです。簡単にどこででも出来ますから。屋内であれば机がなくても寝そべってすることが出来ます。ただ、力の差が明らかでは負ける方にはつまらないでしょう?ですから譲歩してさしあげるんです」
「……寝そべってするとは、お前達がいた世界は随分奔放だな」
すかさず指摘するが佐助は表情を変えない。
「男同士で考えてください。酒の余興にもなるでしょう」
「ふん。それで、指一本か?」
に視線を戻して問う。
「お願いします」
顔を俯けて頼むに謙信も再び興に乗る。
「あまりに物足りぬだろう?」
「二本は無理に決まっています!」
思わず必死になるに謙信は一瞬背筋がゾクリとするが、まだ我慢をしようと佐助に「仕切り直せ」と言う。
そして戯れに人差し指を一本だけ差し出すと、が「今度こそ」という真剣な顔で指を握ってくる。
しかし、その細い指の感触からも、やわらかな掌の感触からも、少しも負ける気がしない。
「では尋常に。一、二の、三!」
「んっ……!」
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