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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第4章 急―御手柔らかに―


「そういう言い方しないでください!」
「まぁまぁ。謙信様、百聞は一見にしかず、です。一度謙信様もされてみてください。すぐに分かりますから」
場を仕切られ、まるで子供を諭すように言われるのは気に喰わないが、確かに佐助としている事を自分がしていないのは気が済まないというのが正直な気持ちである。
謙信は佐助と場所を替わり、と机を挟んで向き合う。
「えっ?私?佐助君と謙信様じゃなくて?」
慌てるが自分ではなく佐助を見ている事すら今は腹立たしい。
目の前に自分がいる時に他所を見る事にたまらなく嫉妬を覚える。
「佐助と試して何が楽しい。早く作法を説明しろ」
不機嫌に言う謙信は明り取りの障子から射す光を浴び、色素の薄い月光色の髪がキラキラと反射している。
は内心、「綺麗な男性ってずるいな」と思ってしまう。
不機嫌な顔も気品にあふれ、ちょっとした仕草にまで色気がある。
左右で色が違う瞳も、そのアンバランスさがどこか危うく、見つめられると胸がざわついてしまうのだ。
「細かい規則は今は置いておきますね。本来利き腕同士で勝負するのですが、例えば俺が謙信様と比べるなら互いに右腕を机に乗せます」
「こうか?」
謙信が着物の袖を軽く払って右腕を机に出す。
「早くお前も腕を出せ」
両手を机の下にしまっているを急かす。
「はぁ……」
心底困ったような顔でが右腕を出すが、改めて机に出して比べると白く華奢な指先が頼りない。
「ですが謙信様、子供同士ならこのままで良いのですが、力の差が明らかにある場合、つまり大人と子供だとか、ある程度成長した男女の場合ですが。力勝負とはいえ明らかに結果が見えていては面白くありませんでしょう?」
佐助の説明を頭に入れながら謙信は思わず素直に頷く。
「確かに、力比べで女に負けるわけがない」
「ですから、ここで「ハンデ」という物が必要になります」
「はんで?」
「そうですね……「調整」、でしょうか。拮抗するかもしれない、くらいの調整をするのです。例えば謙信様は利き腕を使わないとか、力が入りづらい角度から勝負を始めるとか」
「……だからお前は左腕だったのか?」
「そう言う事です。さん、謙信様にハンデはもらう?」
「もらわなきゃ無理に決まってるよ」
佐助も頷く。
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