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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第3章 破―犬も喰わない―


「……本当にお前がこれを毎日したいというのなら、俺は予定の時刻より随分早く支度をしなければならん」
「え?」
「満足できなくなるだろう。いや、そもそも……」
謙信の表情が翳り、は嫌な予感がする。
「お前は佐助や信玄にもこんなことをするつもりか?!同じ城に暮らすというのなら、お前は安土でもこんなことをしていたのか?!」
思わぬ誤解を招き慌てて首と手を振る。
「ちっ……違います!恋仲の相手や夫婦だけです!!私だって、こんな挨拶をするのは初めてですっ……!!」
そうでなければ謙信に指摘されるまでもなく「はしたない」にも程がある。
「本当だろうな?!佐助も同じ感覚なのか!!」
「違いますってば!!佐助君を困らせてしまいますっ!」
これは佐助に会った時に謝罪しなければと思いながらも謙信の誤解を解くのが最優先である。
「本当に初めてですし、こういう挨拶もよくある、というのを、謙信様に触れる口実にしただけです!」
「それだけか?!」
「天に誓って本当です!」
「天などどうでもいい、俺に誓え!!」
「何にでも誓いますから!」
「何にでもとはなんだ!俺だけに誓え!!」
段々と下らない些末な言葉尻の話になってきたとは話題を変えたいが、謙信が一度動揺するとおさめるのが難しいというのは承知だ。
自分の軽率な悪戯心を反省する。
「謙信様、何かありましたか?」
普段通りの佐助の声がする。
「時間厳守の謙信様がいらっしゃらないので皆が心配しています。まぁ、どうせさんと惚気ているのだと思いましたが、案の定ですか?」
淡々と言われ、は赤くなる。
「惚気で済むか!」
謙信の険しい声に佐助は「なぜ朝っぱらから痴話喧嘩を」と漏らすが、ここでややこしくするわけにもいかない。
「……何かご立腹になることでも?望み通りさんが春日山城に暮らして、毎日会えるではありませんか」
「さっ……佐助君、ごめんね!その……、『いってらっしゃいのキス』を……するものだと、言葉足らずに説明してしまって、誤解が……」
の赤面しながらも申し訳ないという顔に佐助は「そんなことか」と呆れながら、謙信の剣幕にどうしたものかと考える。
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