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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第2章 破 ―信長の手習い―


「謙信様。確かに織田軍の武将の皆さんはさんに気を許して親しくしてらっしゃいましたが、謙信様が取っつきにくくて気難し過ぎるというのも勘定に入れてください。きっと信長様はさんの素性をご存知ない故に後見人を買って出て、さんを安心させたいのではないでしょうか。それに越後でもそういう風に言われていた方がさんも安全でしょう。何より素性を怪しまれずに済みます」
合理的な利点を述べる佐助に謙信も妥協を見せざるを得ない。

「えっと、それで、結局この箱は私が開けて良いんですか?」
「お前にだ。信長が「これからも折に触れ可愛い姫に贈り物をするのを寛容に受け取ってくれ」とのことだ」
不機嫌ながらも怒りの矛先を少し納めた謙信にもホッとする。
目の前の贈り物を見つめると、やはり懐かしさをおぼえる。
「なんだか申し訳ないですね」
「……娘を嫁に出した親が嫁ぎ先での嫁いびりを案じて仕送りするみたいだね」
佐助の言葉には「ほんと」と笑い、薄い和紙をどける。
中には反物や舶来の小物、本などが入っていた。
「……これは、お裾分けですね」
が感心しながらも苦笑して言う。
「そうなの?随分珍しい物だし、どれもさんが喜びそうな物に思えるけど」
「一見そうみえるけれど、だって、絶妙に信長様が要らない物だもの。きっと献上品の中から私が喜びそうな物で大して自分には必要のない物を譲ってくれただけだと思う。見るからに女性ものだったり、反物も信長様がお好きな色味でもないし、これなんか使い方も分からないから「まぁ綺麗だし良いだろう」くらいの気持ちで入れて下さったんじゃないかな」
ビードロを見つけて言う。
「言われてみれば……まぁ、」
佐助も認める。
「それに謙信様、信長様なりに謙信様に気を遣っているみたいですよ」
「どこがだ?」
顔をしかめたまま言う。
「だって、私が好きな色味の反物はありませんもの。信長様は私がどんな反物を自分に選んでいるかご存知です。けれどそういう柄や色の物は一つもありません。これだけあるのに一つもないのはむしろ不自然です。子供が遊ぶ物も入っていますが、きっとこちらでも針を持ちたがるだろうと、すぐに縫い物が出来るようにと贈って下さったんだと思います。それにほら、私にも書置きがあります」

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