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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第2章 破 ―信長の手習い―


今となっては無事に五百年後へ帰されなくて良かったが、それにしてもまるで信長との戦を「ほとほと面倒なことをしてくれた」という様な言い草にも腹が立ち、よくぞそんな余裕があったものだと忠誠心を疑いたくなる。

「何が「ほっとした」だ。貴様はそんな事をしていたのか?あの時は正真正銘の敵陣だぞ?俺に黙って敵陣の本丸に乗り込んでいたのか?」
不満をぶつける謙信に佐助は変わらず淡々としている。
「謙信様は飲み歩いていたじゃないですか。諜報活動は俺の本分ですし。それに俺とさんは選んだわけでなくとも敵陣の大将と出会ってしまっているので事情が複雑でした。俺やさんの感覚では偶然助けた相手が大物だっただけで、別にどこに飛ばされていてもおかしくなかったわけで、誰が敵だとか味方だとかという感覚があまりないんです。出来れば仲良くしてくれればなと思うくらいで」
四年も傍にいてまだそんな呑気な考えだったのかと呆れるが、佐助は全く悪びれていない。
も大きく頷いている。
「うん、私も思ってた。そもそも誰と誰が何を争ってるのかも知らなかったし。……えっと、それで、その時にまず私は状況が分からないままだったので、きせずして助けた形になった相手に織田信長だと名乗られても頭のおかしい人かと思い、信長様は信長様で未来から来たと説明する私の正気を疑ったり、唐突に「天下人の女にしてやる」なんて凄まれたので身の危険を感じて逃げだしたら顕如さんと出会って、その後にすぐ崖から落っこちそうになったところを幸村に助けてもらって、ついでに信玄様と鉢合わせて、その時に謙信様とも初めてお会いして、佐助君とも再会して。事情を呑み込もうとしてた矢先に追ってきた織田軍の武将に捕まって、戻ったら今度は駆け付けた秀吉さんには放火犯かと疑われるしで。……思い出しても散々でした」
も我ながらよく誰にも斬られずに済んだなと思う。
あの慌ただしい中では、誰に斬られていてもおかしくなかったと今では思える。
顕如には傷を負わされたが、それは立場的な意図で狙われただけで、最初に知らぬ者同士で出会った時には不穏ではあれど、「気をつけて帰れ」と言われるだけで済んだ。
運が良かったとしか思えない。
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