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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第2章 破 ―信長の手習い―


悔やまれる事はいくらもあるが、どれも今だからこそ思える事だ。
だが、もし分かっていたならあの時に捕まえていた。
そうすれば面倒な回り道もせず、誤解でを苦しい立場に立たせずにも済んだ。
悩ましい謙信をよそにが続ける。

「そうです。火事にもびっくりして、目の前に酔いつぶれた信長様が寝ていて、……その時に誰かが信長様を殺そうとしていて。でも刀なんて見た事もなかったから状況にますます混乱して。だから思わず「危ない」って声を上げたらその人はいなくなったんですけれど。それでも炎が凄かったので、とにかく信長様を引っ張り起こして本能寺の外に逃げたんです」
一つ一つ話を聞くと、何故そんな厄介な場に居合わせたのかと苛立ち、そしてよく無事でいられたと信じられない気もする。
「……何故そうも危険極まりない瞬間にばかりお前達は居合わせるのだ?」

戦場にしろ燃え盛る復讐の舞台にしろ、丸腰で右も左も分からない人間が現れるにはあまりに最悪の状況である。
責める口調で睨まれた佐助も困った顔しかできない。
「俺にも分かりませんよ。それどころか、同じ場所でワームホールに飲み込まれたのに四年のずれがあったり、場所もばらけていたので俺は俺で探していたんです。責任を感じていたので」
佐助の言葉には勢いこんで「佐助君は悪くないよ!」と言う。
「あの日、京都のあそこで居合わせたのは偶然だし、佐助君だって予想してなかったんだもん。私の事まで心配してくれて心強かったし、本当に感謝してるの。危険を冒して安土の城にまで会いに来てくれていたし、状況を説明して励ましてくれたし。むしろ一緒に巻き込まれたのが佐助君で本当によかった」
の言う事は真実だろうが、ここまで佐助がを陰から支えていたのが分かると謙信としては面白くない。
けれど佐助は表情を変えないまま手を小さく振る。
「それは偵察も兼ねていたからいいんだ。さんが安全ならそれに越したことは無かったから。とにかくワームホールが現れるまで安土城にいた方が安全だと思ったのは本心だし。……なのにまさか信長様が謙信様との戦にさんを連れてきちゃったり、そのさんを謙信様がさらに越後に連れ帰ってしまうしで頭を抱えたけど、まるく収まってほっとした」

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