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闇・色

第2章 近づく距離


かかしサイド

俺が自らマスクを下げようとすると、サキはそれをとめた。
自分でみたいと。

なんだそれ、さらに緊張するでしょーよ。
普段素顔なんてほぼ誰にもさらけ出してない。
食事中ですら気を抜かないほどだ。

でも今夜は俺もどうかしているのか、初対面のサキにたいして、どこか心の一部が彼女に気を許している。
ましてや、素顔も見せるなんて…



彼女の手はマスクをゆっくり、ゆっくりとおろすのに、サキは俺の眼だけをずっとみつめたままだ。

なんだか、はずかしいようななんともいえない、心の中に熱いような、はじける様な気持ちが湧いてきた。



一度、目線を口元のほうに伏せて見た後、もう一度、ぐっと俺の眼を見る。

まただ___

彼女の目は俺の中まで、俺が隠しているもっと先まで入ってきた。
俺の鼓動が早くなる。

そうこうしているうちに、額当てを持ち上げられた。

「左目…開けて…」

サキのささやきとともに、ゆっくりと写輪眼を開いた。

彼女の瞳から、一瞬悲しみが見えたのちに、安堵のようなまなざしが見えた。



両目でみるサキは、なぜか目が離せなかった___

むしろサキの瞳に完全につかまっている感覚を感じているうちに、彼女はゆっくり俺にこう伝える。

「ありがとう見せてくれて。かかし…あなたって弱いね…」

それを聞いて笑えた。

「…はは‥俺のこと弱いっていう人、初めて見たよ。…そうかもね、俺は、ほんとは弱い…‥」

案外はっきり弱いといわれて、なんだか一部肩の荷が下りたように感じる。
これまで弱さなんか見せなかった。
見せたくなかったし、弱くいるわけにはいかなかった。

なのに、この子はいとも簡単に俺の隠している部分を見据え伝えてきた。
ほんと…変わってる…


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