第2章 近づく距離
かかしサイド 続き
そうして、サキは続けた。
「かかしが持っているこの真っ黒な部分はとても深いものだと思うけど、いずれそこにできた穴を埋めて、真っ黒なものから、ちゃんと色をつけていけるようになるから。
本当の意味で強くなれるからさ。
…今は私の言葉を理解できないかもしれない。
でもいずれわかるときがくる。
だから、そのままでいてね。かかしは、そのままでいいんだから。」
案の定、俺は彼女の言葉をすぐに飲み込むことができなかった。
何も守れなかった俺が、そのままでいいのか?
そのままでいいとはいったいどういうことなのか。
闇をうめて、色をつけることができる…
そんな日が本当に、この俺にくるのか
いやむしろ俺がそうなることは、だめなんじゃないか
なんだか、腑に落ちず考えが堂々巡りとなった俺にサキは言う。
「かかし。今もいったけど、いずれわかる日がくる。
今考えても、今は答えはでないよ」
あ、そっか…
そう思い苦笑いをこぼす。
「かかし、またね」
その言葉を聞いて、どうしてか、俺はなんだかまだ彼女といたいと思ってしまった。
「え、待ってサキ…」
心に思ってしまった言葉が、そのまま出てきて自分でも驚く。
その言葉にサキは俺をじっと見つめる____
待ってといったわりに、その後の言葉が情けないことに思いつかない。
数分にも感じられた沈黙を、サキが破った。
「かかし、うちに上がっていきなよ」
サキがどういうつもりでそれを言ったのかわからなかったけど、なんだかその言葉に素直に俺は吸い込まれていったんだ。