第3章 サキの術・少年時代1
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シトシトと降る冷たい雨の中。
私は木の葉の墓地に立っている。
目に映るのは、小さな銀髪をした少年。
一凛の花を片手に、その小さな背中は悲しみ、寂しさ、痛みと、そして怒りで震えていた。
彼の思いが色として目に見えて私の瞳に突き刺さる。
吸い込まれるようにその小さな背中に近寄ると、はたけサクモと墓地には書いてあった。
目の前にいるのは、小さなちいさな少年、かかし。
「お前…誰…」
振り向かずにそういう君の言葉はトゲがある。
「怪しいもんじゃないよ。とりあえず、こっち、向いて?」
そう促すが、君は頑なに見てくれない。
沈黙の中、私と君の間に雨だけが静かに降り注ぐ___
そっか、泣いてたんだねきっと。
男の子だから、誰にも見せたくないか。
「私はサキっていうんだ。雨強くなってきたし風邪ひくから、帰ろ?送ってく」
そういってそっと顔を見ないように肩を抱き寄せた。
君は言葉に感じるトゲとは反対に思ったよりも抵抗はせず、一緒に歩いてくれた。
目に見える彼の感情の色に、少し黄色い明るい色がさす。
ちょっとだけ、警戒心をといてくれたかな…
君の案内で、たどり着いたのは一軒家。
「風邪ひかないように、お風呂すぐ入んなよ?」
そういって頭をなでる。
不貞腐れたような顔をしながら、フンって顔してるけどその眼の下は赤くて、きっとたくさん泣いたんだろうとわかった。
見た感じだと、家には誰もいる様子もない。
父と子2人だった…
が、その父さえも失ってしまった…というところか。
かかしの闇の始まりは、父との早すぎる別れ…
でもこの悲しみに負けないくらい強い怒りは?
そう考えを巡らせながら玄関先でぼんやり雨を眺めていると、君は私の服をつかんで
「結構濡れてる…お前も風邪ひくだろ。…家に入りなよ」
と、目線をそらしたまま言ってくれた。
かかしって、こんな男の子だったのか…
ツンツンしてるけど優しいじゃんと思い、一緒に家に入った。