第29章 肝試しの最中に / ※甘裏
すたすたと前を歩く勝己くん。
私はびくびくしながら後をついて歩くけど、正直怖すぎて今にも足が止まりそうだった。
せめて手を繋ぎたいけど、勝己くんはべたべたするのは好きじゃないから我慢していた。
『うっわっ!』
周りを見過ぎて前を向いてなかったから勝己くんの背中に盛大に激突した。
『…いった…きゅ、急に止まらないでよっ…』
「…お前、怖いなら怖いって言えや」
『ふぇっ…?』
こっちを向いてくれないけど、差し出された右手。
『…繋いで、いいの?///』
「早くしねぇと先行くぞ!」
『…えっ、あ、待って待ってっ//』
私は両手でその手をがっちり掴むとまた歩き出した。
手の暖かさから怖さなんて微塵も感じなくなった。
『ありがと、勝己くんっ』
「…いいから、さっさと歩けっ」
『うんっ///』
そう言いつつも歩く速さを私に合わせてくれる勝己くん。
耳が真っ赤なのは気にしないでおこう。
肝試しもあと半分ってところで無言だった勝己くんが口を開いた。
「………誰か、いんな…」
『…えっ⁉︎』
私は後ろを振り向くけど、誰もいない。
『…こ、怖いこと言わないでよっ』
「……こっち来い」
手をぐっと引かれて道から外れ、木の裏に後ろ向きに立たされると手で口を塞がれ隠れた。
その一連の行動が一瞬の出来事で何がなんだか分からない。
ただ言えることは勝己くんに抱きしめられてるってことで自分の心臓の音がうるさかった。
「……行ったみてぇ、だな…」
特に何にも音はしなかったけど、勝己くんのことだから本当に誰かしらいたんだと思う、ということにした。