第17章 爆心地と濡れ場を演じる / ※微裏
「癒月さん、入りまーす!」
スタッフの方の声がスタジオに響いた。
『皆さん、本日も宜しくお願いします!』
私は入口で深々とお辞儀をした。
私の職業は女優。
先日から新しい映画を撮るため撮影期間に入っていた。
そして今日は、映画の見どころでもあるちょっとした濡れ場のシーン。
何度か経験あるけど、今回はちょっとがっつりあるみたいで緊張していた。
しかも今回のお相手は意外な人。
「プロヒーローの爆心地さん入りまーす!」
そう、プロヒーローの爆心地こと、爆豪さんだった。
まさか彼が演技するなんて思わなかった。
しかもこんな恋愛映画。
監督たっての希望でオファーしまくってやっと折れたそうだ。
確かに顔と体格は良いし、ヒーローじゃなかったらモデルとかも合いそう。
でも噂通りの気難しい人でなんでオファー受けたのか謎だった。
楽屋でも挨拶したけれど、もう一度挨拶しようと彼の側に寄った。
『今日は宜しくお願いします。』
「…あぁ」
楽屋で挨拶した時と同じ態度、無愛想だし演技なんて出来るのかな?と少し不安になった。
でも返事はしてくれるから悪い人ではないみたい。
そして監督さんが私に声をかける。
「リルルちゃん、じゃあ始めようか!」
『はい、お願いします。』
映画の内容はどろどろの恋愛もので、既婚者なのにいろんな人と浮気してその1人と恋に落ちる話。
そのいろんな人のうちの1人として爆豪さんとの唯一の濡れ場がある。
まだ俳優さんならまだしも、未知数の人と濡れ場の演技するのは正直緊張する。
とりあえず台本に目を通して役に入る。
「はーい!カット!!!」
『ふぅー』
次はいよいよ、彼とのシーンだ。
ふと視線を感じて見てみるとがっつりこっちを見ていて、思わず顔を逸らしてしまった。
演技中もなんか見られていたような気がしていた。