第10章 約束
目が覚めると、私は一人自室に寝かされていた。
少しだけ背中が高くなった状態で、周りを眺めるようにしていたら、薬を煎じていた家康と目があった。
『目、…覚めた?』
「家、やす… はっ、信長様は?」
大事な、大事な事を思い出して、私は起き上がろうとした。
『様、ご無理はいけません。』
私の肩を押さえたのは、咲だった。
『信長様は、…隣の部屋にいる。眠ってるはずだ。秀吉さんがついてる。
政宗さんと光秀さん、三成が戦や今回の奇襲の始末をしてる。』
「…、じゃあ、信長様のいる部屋に…。隣の部屋に連れてって。」
『ダメだ。』
「どうして?」
『…はぁ。あの人…。暴れたんだ。あの後。』
「暴れた? って、信長様が?」
『あぁ。あの後、秀吉さんと政宗さんに抱えられてあんたの部屋まで連れていった。
流石だよ。鍛え方が違うからか、俺の一発じゃすぐ目覚めてさ。
今度はあんたが拐われたって。呑気にするな、を助けに向かうから兵を出せって。
さすがに、それは有り得ないからさ。
秀吉さんがあの人の腰回りを立て膝で抱えるように押さえて。政宗さんが両脇を押さえて。
いつのまにか帰ってきていた光秀さんが、三成から事情を聞いてて、気配を消して近づいてあの人の腰にぶら下がった脇差しを取り上げようとしたんだけど。』
「…けど?」
『ふっ。』
家康が珍しく笑って、額に手を当てた。
「?」
『大変だったんだからね。
脇差しを取り上げようとした光秀さんに気付いた信長様が、抜刀したんだ。皆、焦ってさ。力が少し抜けた瞬間に、腰回りを押さえてた秀吉さんを信長様が蹴りあげて縁側から庭に転げ落ちたんだ。』
「ええっ!」
『三成が俺を呼びに来てさ。俺はあんたを抱いてたから、弥七と吉之助、咲にあんたを任せて、急いで向かった。
今度は政宗さんが腰回りを押さえて、刀を持つ手を光秀さんが押さえてた。
敵の忍だって、秀吉さんを斬り付けようとしてて、秀吉さんも、錯乱状態のあの人に気が動転して、動けなくなってるし…』
「それで、…どうしたの?」
『俺が、思いっきり殴った。』
「へぇっ!?」
『暴れたおしてるもんだから、矢傷からは血を流してるし、毒による錯乱や幻覚なら言っても聞かないからね。
いい加減にしろ、だったかな。』