第2章 ふたりでひとつ
天守の襖から射し込む朝陽が、新しい一日を告げる。私は、どのくらいこの朝陽を浴びたのだろう。
すっきり目が覚めだけれど、陽射しが眩しくて背を向ける。すると、宝物みたいな寝顔が間近に迫った。
『わぁっ。』
不意をついて出てしまった言葉を、飲み込むようにして、寝顔を眺めながら柔らかな髪を起こさないように撫でた。
可愛い。
愛しすぎて、私は穏やかな寝顔に口付けをしようとした。もうあと少しで、唇が触れそうになった時。
ぱちり。
「ーっっ!」
『おはよう。』
「お、起きてたんですか?」
『貴様から求めてくるのだからな。そのままにしておいた。』
「もぉっ!寝たふり?」
『…して、何をしようとしていたのだ?』
「えっ、…。」
私と信長様の距離は、握り拳程度しかなくて。
【目は口ほどに物を言う】
その言葉が当てはまるように
私の頭の中は、信長様にはお見通しだと思った。
だから、私は、信長様の下唇を食むように口付けた。
すると、途端に信長様が被さるように見下ろして、私の背中は褥に縫い付けられる。
信長様からの口付けは、次第に深く、体の芯を溶かすようだった。
緩められる夜着で胸元が露になって
沢山の星が降ってくる。
今が、朝でも昼でも関係なくて
ただ、この愛される時間が永遠に続けばいいと思った。
『…今は、此処までのようだ。』
「え?」
『姑が来た。』
「しゅうと、…秀吉さん?」
耳を済ませば、バタバタと足音が聞こえる。
『御館様、お目覚めですか?』
『…。』
「…呼んでますよ?」
『、信長様はいらっしゃるのか?』
「ほらっ、呼んでますよ?」
『俺はまだ、目覚めておらん。』
『「はぁ?」』
「ふふふっ。もぉ、起きてるでしょう。」
『本日は、昼からの遠乗りの為に、早く政務を終わらせると昨日仰いました故、皆が御殿で朝げを済ませ、既に広間に揃っております。御館様との朝げは政宗が用意しております。』
「…遠乗りの為に?」
『あぁ、昼はあの丘で、茶屋で買った団子でも食おうぞ。その後は、約束通り貴様を抱き潰す。』
「あっ。」
ちりっとみぞおち辺りに痛みが走る。