第3章 梅の花 春の隣
「あぁ、やっぱり…。」
予想通りの結果に、ショックは隠しきれなかった。
自分なりの妊活をしてるからってのもあるけれど。
この時代で出来る事なんて、たかが知れてて、目頭が熱くなるのをどうにか堪えて、私は咲のもとに向かった。
「やっぱり、だった。」
『まぁ。では準備をしなくては。』
「少しなら部屋にあるから、後でいいよ。家康がこういうときに飲む薬を用意してくれてたから、飲むね。」
『昼を召し上がったら、休みましょう。』
「うん。」
少しだけ残念そうな咲の表情に、私は優しく笑って返すしかなかった。
着替え終わって、厨にまた向かう。
すると、そこには信長様と秀吉さん、光秀さん、三成くんが待っていた。
『着替えはすんだか?』
「はい。お待たせしました。」
『冷えないようにしろよ?』
『昼を作ろうとして風邪を引かれては困るぞ?』
『ご無理なさらずに。』
「ありがとう。…信長様。軍議は?」
『貴様の作った昼を食べるために終わらせた。』
「じゃあ、庭の梅の木で食べましょう!」
『梅?』
「はい、梅の花が咲いていました。みんなで見たら、難しいことを考えている頭の中が落ち着くような気がします。」
『ふっ、そうか。では行くか。』
料理番の方が、お盆にのせたおにぎりを運んでくれた。
『ほう、もう花を咲かせたか。』
『見事なもんだな。』
『春も、もうすぐか。』
『寒空のしたで咲く梅の花は、様のようですね。可憐で、お強い。』
「…ちょ、三成くん!
嬉しいけど、恥ずかしいよ。」
『可憐ではあるが、お転婆だな。』
『光秀、言い過ぎだ。』
梅の木を見上げながら食べていると、暖かな日差しが雲間から降り注いだ。
自然と、信長様と私は二人で同じ花を見上げていた。
「もうすぐ、雪解けですね。」
『あぁ。また、二人を呼び戻す事になった。』
「やっぱり、そうでしたか。」
『光秀からよく学んでいるようだな。』
「お師匠ですから。…信長、様。」
『なんだ。』
「月のさわりが来ました。」
『…そうか。』
「ごめんなさい。」
『謝るな。あやつらが来る時期ではないだけだろう。』
「…はい。」
ひんやりとした風が、私の髪を揺らしながら遊ぶ。
信長様が、私を羽織の中に引き込んだ。
全てのしがらみから、護るように。