第17章 きみのぬくもり
何があっても元気に産まれてきてくれる、そう信じて待ち望んでいた、聞きたくて仕方がなかった声が、産室とその廊下を包み込んだ。
『家康!』
『信長様、。おめでとうございます。
御世継ぎのご誕生です。』
「信長、さまっ。はぁ、。」
『っ。良くやった!』
「はいっ。やっと、会えた…」
『あぁ。』
『御世継ぎ!、良くやった!』
開いたままの襖から秀吉さんが声をかけてくれた。
『兄様。泣くなら、俺の肩を貸そう。御世継ぎ、おめでとうございます。良くやった。』
『赤飯だ!やったなぁ!家康!』
『皆に知らせましょう!』
産室に、入らずとも、皆が私に声をかけてくれる。
すると、綺麗な産着に巻かれた赤ちゃんを、家康が抱いて連れてきてくれた。
『信長様。』
『あぁ。』
信長様が、ゆっくりと赤ちゃんを抱き寄せた。
産着から、小さな手が飛び出した。
私はその手を、小さな小さな握りこぶしをそっと握りしめて呟いた。
「やっと、会えた。」
『あぁ、そうだな。』
「信長様、貴方の子です。」
『あぁ。これ程に幸せな事はない。礼を言う。』
信長様の目尻が少しだけ光ったのがわかった。
「はぁ、良かった。」
『、貴様が言葉になら無い程、愛おしい。』
「ふふっ。二人で、みんなで、育てていきましょうね。」
『あぁ。貴様のお陰で命の尊さを改めて考えた。必ずや泰平の世を築こう。流す血を最小限に。誰もが笑い、幸せをつかめる世を作る。約束する。』
「はい。この子といつまでもお側におります。」
ぐすっ、ぐすっ。
赤ちゃんの泣き声とは違う、すすり泣く声に周りを見渡せば、秀吉さんを筆頭に三成君と、側に座る家康が泣いていた。
光秀さんは、私に背を向け月を眺めているようだった。
『武将を泣かすなんて、流石じゃねぇか!』
そう言ったのは政宗で、小さな湯のみを私に握らせてくれた。
『何も食ってねぇだろ?白湯だ、まず飲め。…頑張ったな。』
そう言って、私の頭を撫でてくれた。