第33章 ○その個性の名は
それは漫画みたいな出来事から始まった。
いつもと変わらない月曜日の朝。
お茶子ちゃんと登校するため待ち合わせ場所で待っていた時の事だった。
「どいてどいてー!!!」
突然、女の子が物凄い勢いで、例えるなら飯田くんみたいな速さでこっちに走ってきた。
もちろん私は避けることなんて出来ず、激突してしまう。
「いたたた…ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
『は、はいっ…なんとか大丈夫です…』
女の子は何事も無かったかのように立ち上がると、ごめんなさいっ!急ぐので!、とその場を去って行った。
とっさに個性を発動出来たから良かったものの、普通の人だったら大変だった。
凄い人だったなぁ、なんてのんきに考えながら立ち上がると、ちょうどお茶子ちゃんが来た。
「おーい!リルルちゃーん!おはようー!」
『おはよー!お茶子ちゃん』
「どうしたん?なんかあったん?」
『うんーさっき飯田くんの女の子バージョンに激突された!』
「えぇ!?それ、大丈夫なん!?」
さっき合った事故を話しながら、私達は学校へ向かうため、駅へと向かった。
1番の憂鬱な時間、満員電車。
お茶子ちゃんと離れ離れにならないようにするけど、乗り降りが激しい駅で、少し離れてしまった。
隅に追いやられてしまい、ついてないなぁと思っていると同じ制服が目の前にあったから、誰だろうかとつい顔を上げてしまった。
『…えっ、みみ緑谷くんっ!?』
「あれ? 癒月さん?」
それは同じクラスの緑谷くんだった。