第28章 ○幼なじみの恋人と / ※甘裏?
僕には好きな人がいた。
容姿端麗で頭脳明晰で、誰にでも優しくてこの学校で知らない人はいない。
『あ、おはよう、緑谷くん!』
「お、おおおはようっ、癒月さんっ///」
無個性の僕にも分け隔てなく接してくれる。
僕には到底届きそうにない天使みたいな人。
綺麗な黒髪をなびかせながら、僕の横を通り過ぎる。
ふわっと香る匂いに酔いそうになりながら、癒月さんはある人の隣に並んだ。
『おはよう、勝己くんっ』
「…ってめぇ、またあいつに挨拶しやがって」
『当たり前でしょ? クラスメイトなんだから』
そう彼女は僕の幼なじみ、かっちゃんの彼女だ。
*
事件が起こったのは、ある日の放課後のことだった。
僕が雄英を受けると公言するとあからさまにかっちゃんの態度が悪くなった。
「デェク、調子乗ってんじゃねぇぞ!」
『ちょっと!何してるのっ!』
「…やっと戻ったんか、っとその前に」
かっちゃんの個性で僕の制服が少し焦げたところで、癒月さんが止めに入ってくれた。
でも僕が大事にしていたノートを取り上げられてしまう。
『勝己くん!何して…っ』
「…いいんだよ、これくらいしねぇと」
ノートはかっちゃんの個性で爆破されて挙げ句の果てに窓から捨てられてしまった。
『…緑谷くん、大丈夫? じゃ、ないよね…』
「…っ、リルル! 帰んぞ」
僕に近づいて心配してくれる癒月さん。
けどかっちゃんに腕を掴まれて、引き離された。
『……帰りたくないっ』
「…ンだって?」
『今日は、一緒に帰りたくない…っ!』
「……っお、まえっ!」
あんな怒ってる癒月さんを見るのは初めてだった。
けどかっちゃんから逆らえないのかそのまま連れて行かれた。