第2章 帰郷そして再開
***聴視点***
「…っ、てめェの勝ちだ。とっとと行っちまえ」
『うん…。…紅、心配してくれてありがとう。後悔させないから』
「チッ…。てめェの目的を達成するまで、帰って来んじゃねェ。ただの皇国かぶれを浅草に入れてやるつもりはねェ」
『端からそのつもりだよ。灰病の治療法を見つけたら戻るから。だから待ってて』
私が差し出した小指を紅はしばらく睨みつけていたけど。
「骨を浅草以外に埋めることは許さねェ」
そう言って小指を絡めてくれた。
『そんなに待たせやしないよ~』
「へっ。どうだか」
最後はお互い、挑発的な目をしながら笑って別れたけど…、紅は元気だろうか。
ふと、目が覚めた。
あぁ…、随分、懐かしい夢を見たもんだ。
ガタンガタンと揺れる車内で伸びをする。
――次は浅草ー、浅草ー
のんびりと降りる支度をしながら、この10年を少し振り返った。
電車が止まって、扉が開くまでに一度、深呼吸。
新しい一歩を踏み出すような気持ちで駅に降り立った。
周辺の街並みは随分変わっているけど、迷わず歩く。
そうして辿り着いた雷門は10年前と変わらなかった。
『すー、はー…。…うん、ただいまだねぇ~、浅草』
久しぶりの故郷を堪能したいところだけど…、どうにも騒がしい。
煙が上がっているのを見るに火事だろう。
…仕方ない。状況把握のためにも現場に向かうとしますかね。