第58章 すべては可能性の話
***ジョーカー視点***
目の前の女は、ただの私の妄想だよ?と言わんばかりの顔をしている。
「だが、ない、とは言い切れねェ。だろう?」
『…うん、まぁ、そう言われちゃうとね~』
大前提に、人外と思われる存在を認めなくちゃならねェが、“アレ”がいるこの世界で、それは難しくない。
「で、そんな思考回路を持ってるアンタは、浅草でじっとしてるつもりか?」
『今のところそのつもりだけど、白装束がどう動くかだよねぇ~。このまま“アドラリンク”した人間を殺そうとし続けてくるのか。はたまた、何かと邪魔な第8を消そうとしてくるのか。あるいは、それ以外の何かか。狙われる可能性の高いジョーカーさんはどう思われます~?』
「…第8がこっちに堕ちてきてくれると楽なんだがなァ」
『そうなったら、紅が黙ってないと思うよ~?…あぁ、その時はうちも巻き込んでもらえばいいのか』
いや、ひらめいた!じゃねェんだよ。
最強サンが戦力としてこっちにつくってェのは、魅力的だが。
「第8がアンタらを巻き込むと思うか?」
『拠点がネザーだけってのはちょっと心許ないでしょ~。この前みたいに紅を巻き込んでくれれば、イケるイケる~』
「かっるいな。いいのか?そんなこと言って」
『蚊帳の外から見てても楽しくないからね~』
なるほど、こいつもちゃんと浅草の人間らしい。
「…どうせ合流するんなら、今からでもこっちに来ればいいじゃねェか」
ふと思いついて、吸っていたタバコの煙を、目の前の顔に吹きかける。
げんなりとしたそいつは
『私はこの町一筋なんで』
と迷うことなく返してきた。
チッ、振られちまったなァ。
ま、今日のところはこれで退くとしますかね。