第1章 「ねこみみ」/源義経
暖かな陽気が部屋に差し込む。
ついこの間よりも暖かく過ごしやすくなった平泉の地で、
回らない頭を何とか起こしながら、
義経は隣で寄り添うように、
すやすやと眠っている愛おしい人の寝顔を盗み見ようと思い、
目を擦って瞳を開けてみると───。
そこにはすやすやと寝息を立てて眠っている
・・・猫耳を付けた由乃が眠っていた。
何回か目を擦ってみたが、
どうやら夢ではないらしい。
でも昨日は付いてなかったと思うんだが……?
なんて思考をしていると、
「……?義経様?」
どうやらそのまま硬直していた俺に気付いたらしく、
まだ眠そうな瞳をうっすらと開けて、
首を傾げながらもその顔は心配の色が見える。
「いや……何でもない」
とりあえず平常心で不安げな顔をしている由乃を安心させるために声をかける。
だがどうやら様子がおかしいと思ったのか、
由乃は起き上がって俺の額に手を添える。
「んー……熱はないみたいですけど……。
どこか具合が悪いんですか?」
どうやら由乃は、
自分の状況を理解していないみたいだ。