第2章 加州清光 甘酸っぱい想い・:*+.
「では少し一期一振の実践演習を見てみたいね。相手はそうだね…近侍の加州清光、きみに頼もう。」
「えっ?」
主と俺は顔を見合わせる。
「実践ですか?急ですね…しかも清光と…」
心配そうな主の手を調査員に見えないように背中でぎゅっと握って頷く。
「問題ないです。では一期一振と共に道場に案内します。」
一期一振とは初めて刀を交えるけど、絶対に負けない!
主にかっこいいところ見せなくちゃ!
…そしてこの戦いに勝ったら、主に想いを伝えよう。
心の中で闘志を燃やし、道場に向かう清光の背中をいろはは不安そうに見つめていた。
道場に呼ばれた一期一振は事の成り行きを聞かされ、「お任せください」と主に優しく微笑みかける。
一期一振のその余裕の態度にイライラする。
なんだよ。その笑顔!
スーパー王子様じゃんか。そんな顔で主を見ないでよ。
主は…?一期一振を見つめてる?
えっ?なんで…
もしかして主も一期一振を慕ってるの?
余計な雑念が頭によぎったまま実践が始まった。
集中しなきゃいけないのに、一期一振の動きよりも主のことが気になって仕方ない。
キィィン!!
次の瞬間、一期一振の一撃が清光の刀を飛ばし、調査員達からは歓声が上がる。
えっ?何が起こった?
俺が負けた?
「清光…!清光?大丈夫?」
呆然と立ちすくむ俺に主が声をかけるけど、
悔しくて情けない気持ちがいっぱいで主を見れない。
「ねぇ?清光?」
「主…俺…」
「清光?」
「審神者、一期一振と少し話がしたい。一緒に広間に戻ろう」
「は…はい。清光…あとで話そうね?」
調査員に声をかけられ、主は心配そうに俺の手をぎゅっと握りその場を後にした。
「あぁ…。俺ちょーかっこ悪いじゃん…」
誰もいなくなった道場に大の字になり、腕で顔を隠しながら呟く。
鼻がツンとしてきて、必死に堪える。
「清光?どうしたの?」
「安定?なんでもないよ。あっちいって」
聴き慣れた声が近づいてきて、俺の顔から腕を退ける。
「また主にかっこ悪いとこ見られて落ち込んでるんでしょ」
「うっさいなぁー。そんなんじゃないって」
「そう言えば…主と一期一振が2人で粟田口の部屋に入っていくの見たな〜。今薬研たち短刀は遠征に行ってるから、部屋には2人きりだろうね」
「えっ⁈それを早く言え!ばかっ!」