第19章 髭切 姫彼岸花の約束・:*+.
ー翌朝。
「んっ…眩しい…」
目を覚ますと、柔らかい朝日が瞳に差し込む。
隣には私を抱きしめて、すやすや眠る髭切さん。
あどけない寝顔…かわいい。
鳥の子色の柔らかな髪を優しく撫でる。
それにしても…
昨夜は気にする余裕なんてなかったけど、よく周りを見渡してみると、本当に外だ…。
壁なんてないし、風通し良すぎだし、なんなら街から人の声も聞こえてくる。
私、昨日ここで…髭切さんと…ひゃぁぁ!!
恥ずかしさで顔が真っ赤に染まり、噴火しそうだ。
えっ?私…服は!?
きっ…着てる!!良かったぁぁぁ!!
髭切さんが着付けてくれたんだ。しかも自分の上着も私にかけてくれてる。
優しい。嬉しい。髭切さん好き…です。
「ふふ。青くなって、赤くなって…朝から可愛いなぁ。」
「ひっ…髭切さんっ…!起きてたんですね。恥ずかしいです…。」
「おはよう。ずっと眺めていたかったんだけど、いろはがあまりにも可愛くて口付けたくなっちゃった。」
ちゅっと自然に口付けられて、また頬がじわっと火照る。
「あっ…おはようございます。」
「昨日あんなに"仲良く"したのに、口付けだけで照れちゃうなんて、可愛すぎて困るなぁ。うーん。昨日の続き…する?」
「しっ…しないですっ!まだ朝ですし…あっ…あの…!まだ加護札が残ってるので、手入れをさせてください。」
「ふふ…夜が待ち遠しいなぁ。ありがとう。お願いするよ。」
くすっと艶っぽく微笑んだ髭切さんは私をぎゅっと抱き寄せ、膝の上に乗せる。
「昨日の傷はほとんど治っていますね。良かったです。」
「君の加護札のお陰だよ。ねぇ、いろは。その加護札の紋は君の物?」
「はい。私の師匠から受け継いだ"月枝唐梅"の花個紋です。」
「"月枝唐梅"…慈愛の心か。ねぇ。やっぱり僕たちは出会う運命だったみたい。」
「え?」
ピピピっ…。
その時、壊れていたはずの時空移転装置から帰城を知らせる音が鳴り響く。
「っ…!」
うそっ…今…?
そんな…私…まだ彼と一緒にいたい…
だけど…私を待っている刀剣達がいる。
帰らなきゃ。
私の本丸へ。
「髭切さん…」
私は髭切さんを見つめ、覚悟を決めたように立ち上がる。
「私…帰らないと…」
「うん。泣かないで?いいこいいこ。」
私は髪を結っていた赤いリボンを解き、髭切さんの右手首にきゅっと巻きつける。
