第3章 忍び寄る魔の手
「ぁ、っ、はぁ」
ギシギシッとベッドが軋む音が寝室に響き渡る。
「柚っ、気持ちいいよ…!」
四つん這いになる私の体に激しく腰を叩きつける兄。
私は枕に顔を埋めながらその快感に声を荒げる。
それから直ぐに兄は達し、私も後を追うように絶頂を迎えた。
「はぁ…はぁ…」
荒い呼吸のまま私の隣に寝そべる兄は、
私の体を強く抱き締めてくれる。
いつもなら部屋を明るくしたままセックスをするのだが、
この日に限って電気を消すよう私は頼んでいた。
兄に顔向けできない…。
どんな顔をしたままセックスをしたらいいか分からなかったのだ。
「柚」
優しい声が直ぐに近くから聞こえてくる。
私は兄の胸板に顔を埋めたままギュッと抱きついた。
「どうした?そんな強く抱き付いて」
一瞬驚いたような表情を浮かべた兄だったが、
すぐ目を細め頭を撫でながら抱きしめ返す。
「ううん、お兄ちゃんにくっつきたかったから」
胸板に耳を当てれば心臓の鼓動が聞こえてくる。
トクントクンとゆっくりとしたリズムは、
まるで子守唄のような安心感をくれた。
「お兄ちゃん、好き…」
ゆっくり目を閉じて譫言のように呟くと、
私はそのまま深い眠りにつく。
そんな私を優しい眼差しで見下ろす兄は、
おやすみ。と額に優しく口付けをくれた。