第1章 Look【リドル・ローズハート】
大抵の場合、御伽噺のヒロインは可愛らしく純真無垢なお姫様であることが多く、王子様と恋に落ちると相場が決まっている。
では現実の場合は?
例えば、空から女の子が振ってくるとか、前世の記憶を持つ前世の恋人が現れるとか、異世界から女の子が迷い込む・・とか、
仮にそういった非現実的な事象が起こり得るなら、その特別な女の子こそまさしくヒロインであり、この世界の主人公と呼んで差し支え無いだろう。
そう、起こり得るのなら。
いくら魔法溢れるこの世界でも、そんな物語ちっくなことは起きるはず無いとたかをくくっていたし、なんなら女の身でありながら優秀な魔法士集う男子校に通う自分こそ特別であるような気がしていた。
だって、魔法とファンタジーは似ているけれど、あくまで別物で。魔法使いや妖精や獣人は存在するけど異世界人なんて見たことも聞いたことも無かったから、異世界人と宇宙人は私の中で同異議なのだ。
だから、異世界から女の子が迷い込んだと聞いたとき心底驚いたし、魔力の無い異世界人が思いのほか普通で、それでいて強く真っ直ぐで、皆から好かれる彼女を見て妙な焦燥感を感じた。
結局のところ、悪い予感というのは当たるもので、
頻繁に話題にあがるその少女を見つめる想い人の眼差しがひどく優しいと知ったとき、思わず吐きそうになったのだ。