第3章 霞と音の大学ライフーその壱ー
来た道を戻る道中、いてもたってもいられなかった。今すぐ誰かにぶちまけたくて電話をかけた。
『何だよ』
電話の向こうでソイツは不機嫌そうに声を出した。
「いやいやいやいやいやお前あれなに?どーなってんの?お前の彼女、なに?ハ?」
『あァ?』
それは霧雨の彼氏の不死川だった。
「お前バカか?何でまだ手ぇ出してねえんだよ出せよあれは出さねえと駄目だろ」
『なに言ってんだテメェ…』
ドスのきいた低い声で不死川が言う。
実は言うとつい先日、付き合っていてもなかなか手を繋ぐようなことから全く進展しないと聞いたので、これみよがしにいじりまくってたところだ。
「やばかった、俺が霧雨に手を出すところだった」
『ざけんなさせるわけねえだろ!!ぶっ殺す!!!』
「落ち着け不死川…いいか、よく聞け。」
俺はぶちギレるアイツを無視して言った。
「霧雨は美人だと思う。最高の女子だと思う。まあ俺の嫁達には敵わねえけどな。お前にとっては良い彼女かもな。」
『何の話を聞かされてるんだよ俺は。』
「霧雨がエロかった話だよ。」
『ア?』
マジでパニックになった声が聞こえた。
「………お前、幼なじみだから耐性ついちまってんのか?よく我慢できるな…。」
『おい、とりあえず他人の彼女変な目で見るのヤメロ。』
「見るのは自由だろうが。」
『よし、殺す。』
「アホか俺がお前に負けるわけねえだろ。」
最後は言い合いになったので、暑苦しかったし怒鳴るのもめんどいしでぶち切った。
少しでも気が緩むと、サイダーをこぼした霧雨が頭に浮かんだ。
(……あーっ、くそ)
俺はがしがしと汗の伝う頭をかきむしった。
「さっさと進展しろやっ!!!!!」
側に誰もいないのを良いことに、そんなことを叫んだ。
幼なじみの果てに付き合い始めた、いびつな二人。
見てるとむずむずする。何を地味なことをしているんだ。ド派手に次のステージに進みやがれ!!こんちきしょう!!
そんなことを考えると、また暑くなってきたので。
とりあえず、俺は購買でサイダーを購入した。