第15章 知らなかった気持ち
人員不足が加速していた。
天晴が死んだことで、柱がついに二人になった。
いや、あのね、煉獄って人がいるんだけど、あの人はどうも最近外に出てこないから僕は数に入れないことにしたの。あ、これ霧雨さんに言うと怒られるから気をつけないと。
天晴が死んでから、霧雨さんも死んじゃうんじゃないかってくらいひどい状態だった。日が登る頃にはバタンって倒れたから大慌てで蝶屋敷まで運んできた。
霧雨さんを担いで藤の家に行ったら本当に門前払い食らったから驚いたよ。蝶屋敷の主人はクソみたいな偽善者で、見ているだけで反吐が出るけどこんな時だから頼る他なかった。
隊士の治療をしながら剣士もやるってなかなかすごいやつだよね。蝶屋敷はもともと柱の所有物だったんだけど、その柱は結構前に死んだらしい。
今の当主はその柱から蝶屋敷を受け継いだとか。こいつ、素質はあるかもだけど柱には届かない。けど本当にムカつくほど優しさを掲げるやつで、霧雨さんを相手にしても全く怯える様子もなく喜んで治療をするようなやつだった。
霧雨さんは半日寝ただけですぐに目を覚ました。肺に水が入っちゃってて、しばらくゲホゲホ咳き込んでいたけれど、大丈夫とのことだ。安心した。
「ねえ、これからどうする?」
霧雨さんの寝台に身を寄せて、僕は弱音を吐いた。
「二人でどうしろって言うんだよ…」
僕は泣いてしまいたかったけれど耐えた。
耐えるのは慣れっこだからいいんだ。
けど、天晴が死んでから霧雨さんがおかしくなっちゃったことが辛くてたまらないんだ。
「ねえ、霧雨さん」
「…なんです」
怒ってるのかな。僕が天晴を眠らせろなんて言ったから。
「霧雨さん、僕ら継子をもらおうよ。」
「どうしてですか」
「強い隊士を育てるんだ。継子じゃなくてもいい、柱である僕らが下の隊士たちに色々教えてあげたら、みんな強くなるって……」
霧雨さんはいつも通り笑顔だ。
けれどいつもと違う。
明らかに顔色が悪い。毒にやられたとは聞いていたけれど、それだけのせいだとは思えなかった。