第14章 音と霞
その訃報はひとまず柱全員に伝えられた。
隊士には少々遅れて報せが行き届いた。隠、藤の家、刀鍛冶の里にも無事伝えられた。
『霞柱、霧雨は鬼との戦闘の末死亡した』
と_______________________
烏があっさりとそう口にした時、足が止まった。
なんて事のない朝だった。起きて、着替えて、顔を洗っていた時だった。
びしょびしょの顔を拭く気になれない。隣の須磨がふるふると肩を震わせて泣いていた。
嫁の肩に手を置くことさえ叶わない。
鬼殺隊において絶対的な存在であったあの人の死が、どうしても信じることができなかったのだ。
とりあえず隊服に着替えた。まだ仕事の時間には早いが、烏が現場確認は俺に任された_というので行くしかあるまい。
不安そうな顔の嫁たちを家に残し、俺は現場へと向かった。
太陽が真上に来た頃、そこに到着した。現場には隠たちがうじゃうじゃいた。
「音柱様」
そのうちの一人が声をかけてきて、俺は対応におわれた。
現場はとにかく悲惨としか言いようがなく、まるで天変地異でも起こったみたいだった。
そこだけ大爆発が起きたみたいだった。あちこちで地割れしていて、木もおもちゃみたいにバキバキに砕けている。建物があったであろう場所は更地になっており、竜巻でも通ったかのようだった。
そして中心部分で瞳を閉じて座り込んだまま頑なに動かない小さな体が見えた。
「霧雨さん」
その向かいに腰を下ろして向き合った。
目は閉じていた。
俺は驚いた。
彼女は笑ってなどいなかった。
彼女はいつもの笑顔を浮かべていなかった。頬に涙の跡があった。ただ、無表情に目を閉じていた。今にも動き出しそうだった。
左腕がなかった。右足もなかった。残された足も原型を止めていない。血が出ていないところがない。
ああ、この人は終わってしまったんだと思った。そこで本当に死んだらしいなと実感が出てきた。