第10章 はぁ?
僕、桜ハカナ。
不死川のクソ野郎が大嫌いだ。
霧雨さんは大好きだけど。
「お兄ちゃんのその好きは…恋じゃないの?」
ハルナが買い物に付き合ってほしいと言うので、僕は荷物もちをしていた。
妹は僕とは似つかぬ純粋な瞳を向けてくる。
「僕は恋なんてしないんだ。」
「何でぇ?」
「時間の無駄。」
ハルナは顔をしかめた。
「そんなことない!きっと素敵なものだよ…!!」
「確実性が無さすぎる。絶対じゃないことはしたくない。たくさんやきもきして、結局ダメでしたなんて時間の無駄だね。」
僕はそこまで言って、ハッとした。
「何、お前好きな人いるの?」
「えっ!?」
「許さないよ。まだ社会人なりたてなのに。」
「ちっ、ちがうったら!!それに私、もう一年以上社会人やってますけど!?」
ハルナが必死に否定するので、ここまで言うならまあいないんだろうな。
「と、ともかく!私はお兄ちゃんのそれ、恋だと思うな!!」
「んなわけないでしょ。霧雨さんは僕の大好きな人で、誰にもとられたくなかっただけ。」
「何いってんの!!恋だよお!!それは!!」
…なんでわかってくれないのかな。あぁ面倒だ。
「霧雨さんは…。」
美人だし?性格良いし?
まあ、素敵な人だし。ポンコツだけど。
「大好きなだけだよ。」
「……お兄ちゃん…。」
一緒にいたい。
これって恋?は?違うだろ。
そんなちんけな言葉で片付けるなよ。
「頭が幼稚すぎる。異性への好きを全部恋だと思い込むなんて、浅はか。」
思わずきつい物言いをしてしまった。
ハルナはきゅっと口を閉じて、それからすっかり話さなくなってしまった。